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Vol.6 (1985/5[063])

<外国情報>
大学内の麻疹流行−米国


1985年1月15日以降,少なくとも3大学(多分さらに他の3大学)で麻疹が流行した。最初はオハイオ州立大学(学生数5万)で12例,初発患者はロンドンとシェラレオネを旅行中感染したもので,対策としてワクチンが2000doses以上投与された。

1月末,マサチューセッツ州ボストン大学(学生数28000)で大流行がおこった。初発患者はベネズエラ旅行中に感染,1月29日に発症した。3月12日までに82学生患者と5関連例を確認,流行阻止のため大学は春休み終了時学校に戻るすべての学生に麻疹免疫証明の提出を要求した。その上ワクチン5000dosesが学生に接種された。衛生当局は同地区の他の全大学に同じプログラムを採用するよう連絡した。

最大流行はイリノイ州プリンシピア大学(学生数712)で確定または疑似例128(学生113とその他15)が1月15日〜3月10日に報告された。その上明らかに呼吸器併発症による3死亡例が発生した。学生はワクチンを受けるか免疫証明を提出するまで学内にとめおかれ,現在までに421dosesのワクチンが投与された。関連例とみられる患者がインディアナ,ミシガン,ニュージャージーで発生している。学生712人中132人が麻疹免疫歴をもっていた。感染源は不明。

編者註:大学の麻疹対策においては免疫記録がないことが問題である。ボストン大学でとられた厳しい方法が高い免疫レベルの確保には必要で,免疫証明の要求の方が希望者のためのワクチンクリニックの開設よりも有効である。プリンシピア大学における高感染率(15.9%)は明らかに学生間の低免疫レベルによるもので,この例は重症麻疹流行の可能性と,感受性者への速やかな散布を示している。極めて高い致死率(2.3%)は米国では異常(通常0.1%以下)で,理由は調査中。

1980年以来少なくとも14大学から毎年麻疹例が報告されている。1983年中の大学生例は296で,これは全麻疹報告数の19.8%にあたる。大学生の感受性率が15%と高いので,流行を支える可能性は十分存在する。大学保健協議会とワクチン諮問委員会は入学許可の基準として麻疹免疫の証明を要求するよう勧告した。今後5〜7年間の学生は多くがワクチンを受けていない年齢群にあたるので,この特別集団の感染の危険性を低下させる方策を当局は考えるべきである。

(CDC,MMWR,34,No.10,1985)






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