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Vol.6 (1985/3[061])

<特集>
腸チフス・パラチフス


1983年および1984年の腸チフス・パラチフスの発生状況を,厚生省感染症対策課へ届けられた患者・保菌者発生報告カード,管理カードおよび国立予防衛生研究所へ送付された分離菌株の三者に基づいて集計した(1984年については1985年2月10日現在の報告による)。

1983年には腸チフス患者・保菌者あわせて329例の発生があったが,1984年は228例にとどまった。1983年には小規模ながら3例の集団発生をみたが(D6:24例,D1:6例,UVS1:6例),1984年は散発例のみであった。パラチフスAの発生は1983年39例,1984年29例,パラチフスBの発生はそれぞれ215例,224例であった。患者の週別発生状況を図1〜3に示した。腸チフス,パラチフスAでは季節による変動がみられなかったが,パラチフスBではいずれの年も夏季に発生が集中し,前二者とは発生のメカニズムにおいて異なることが示唆された。

分離菌株のファージ型別供試状況を表1に示した。数年前から供試率はチフス菌,パラチフス菌ともに9割前後を示し,患者の診定に当たってもほとんどが細菌学的決定によっており,本疾患の診定には原因菌の分離が重要であるとの認識が定着したものと思われる。

チフス菌のファージ型分布は,1983年に集団発生をみたD6型が高頻度に分離されたものの,D2,E1,M1の各型が例年通り上位を占めた(表2)。検出ファージ型は,1983年23種,1984年21種であった。このうち海外輸入例からのファージ型は前者では15種,後者では14種に及んだが,これまで国内発生のみであったD2型が輸入例からも検出されはじめたことは注目すべきである。

パラチフスA菌のファージ型分布を表3に示した。本菌では検出ファージ型のほとんどが海外輸入例からも分離された。パラチフスB菌は約60%がファージ型1であった。その他3a,3b,Dundee, Workshopが両年ともに,BAORが1983年のみに,Tauntonが1984年のみに分離された。

海外輸入例の全発生数に対する比率は腸チフス,パラチフスAとも1984年に高く,前者では11%から18%に,後者は26%から41%に増加した。

図4に菌別,患者・保菌者別に菌の検出材料を示した。チフス,パラチフスAに比べるとパラチフスBでは患者においても血液からの分離率は極めて低いことがわかる。

耐性チフス菌は1983年にはA型(CP・TC・SM)および53型(CP・TC・SM・ABPC),1984年にはM1型(SM・ABPC)が各1株分離されたが,いずれも海外輸入例であった。



図1.腸チフス患者週別発生状況(発病日による分布)
図2.パラチフスA患者週別発生状況
図3.パラチフスB患者週別発生状況
表1.分離菌株のファージ型別供試率
表2.チフス菌のファージ型分布
表3.パラチフスA菌のファージ型分布
図4.分離菌の検出材料





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