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Vol.6 (1985/1[059])

<国内情報>
神奈川県における肺炎マイコプラズマの分離状況


肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae,以下M. pn)による異型肺炎は4年周期で流行が繰り返されることが知られているが,1984年はその流行年に当たるとの予測がなされていた。一方,厚生省サーベイランス事業においてM. pnの培養検査が実施されることとなり,神奈川県においても1982年6月から検査を開始した。その結果,1983年5月に培養陽性例が出て以来,1984年11月現在まで陽性例が続出しており,予想通り,流行の様相を呈している。今回はその状況について略述する。

県内11ヶ所の定点医療機関(小児科)において,M. pn肺炎を疑われた患者の咽頭スワブを検体として培養検査を実施した。培養にはメチレンブルー,フェノールレッドおよびグルコースを添加した二層培地を用いた。

図1に1982年6月から1984年10月までの培養検査成績を示した。上述したように,1983年5月に培養陽性例が出現し,それ以来陽性例が続出しており,1983年は95例中23例(24%),1984年(10月現在)は175例中95例(54%)が培養陽性であった。特に,1984年6月以降陽性例が増大し,6月(61%),7月(68%),8月(71%)の夏季に高頻度陽性を示したことが注目される。

年齢別による培養成績を図2に示した。5歳から11歳までの年齢層に陽性例が多く,4歳以下では少ない傾向があった。

以上,神奈川県におけるM. pnの培養検査成績について略述したが,今回のM. pn肺炎流行は1983年後半から徐々に進行し,1984年初夏に最盛期を迎え現在に至っているものと推定される。また,培養陽性例は5歳〜11歳の学齢児童の年齢層に多く,本肺炎流行の進展に学校内感染が重要な役割を果たしていると思われる。



神奈川県衛生研究所 岡崎則男


図1.神奈川県における肺炎マイコプラズマの月別分離状況
図2.肺炎マイコプラズマの年齢別分離状況





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