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Vol.5 (1984/12[058])

<外国情報>
1983年におけるヒトペスト症


 1983年にWHOに通報された世界のペスト症例は11ヵ国にわたり715例,うち40例が死亡した。1982年度のこの数字は12ヵ国713例,うち死亡36例であり,世界のペスト事情は1978年以降比較的安定していることを示している。

アフリカ:アフリカ大陸においては3ヵ国,すなわちマダガスカル,タンザニア連合共和国,ジンバブエで1983年にペスト症例が認められた。24症例死亡10例を出したマダガスカルでは,アンタナナリボ州で7症例死亡5例が認められ,うち1例は首都に出た死亡者である。フィアナランツォア州では17症例死亡である。1983年における過去10年来最大のヒトペスト流行がタンザニア連合共和国におこった。タンガ地方のルショト地区で,226症例が報告された。ジンバブエにおいてはペスト症例1がマテベレランドで報告された。他には診断例がなく,かつてペストの常在地域であったザイールでは疫学的に静穏な状況が6年間続いている。

 アジア:アジアではヒトペスト症例がビルマで96例死亡3,中国で25例死亡15,ベトナムで118例死亡なしと記録された。ビルマでは1983年3月13日から4月9日にかけてペル地域にだけペストが現れた。ベトナムではペスト症例が6州で記録され,うち3州では一年中ペストが存在した。118例中69例は4月から9月にかけて,すなわちベトナムにおいては通常ペスト事情が静穏である時期に記録されたことに注目すべきである。

 アメリカ大陸:1983年にはこの地域の5ヵ国でペストが発生した。ボリビアで21症例死亡4,ブラジルで82症例死亡なし,エクアドルで65症例死亡なし,ペルーで17症例死亡2,北米合衆国で40症例死亡6である。ボリビアでは昨年のようにヒトペスト症例がフランツ・タマヨ州で発生し,1月から2月にかけて21症例死亡4であった。ブラジルでは,9月中旬にバヒア州で12例,ミナスゲライス州で4例,そしてシアラ州では40例という重大な流行があった。12月末にかけてまで,特に7つの郡がペストに冒されたバヒア州では症例発生が継続した。エクアドルでは,5月末に64人がペストにかかったチムボラゾ州のアラウシ・カントンに重要なヒトペスト流行があった。同州では10月にさらに1例が記録された。エクアドルでは限定された人間の腺ペストがおこっているのかもしれない。ペルーでは,11月にファンカバムバ州で17症例死亡2が記録された。

(WHO,WER,59,38,1984)






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