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Vol.5 (1984/12[058])

<外国情報>
米国サウスダコタ州におけるダニ媒介ツラレミア(野兎病)の流行


 サウスダコタ州中央部のロウアーブリューレおよびクロークリークインディアン居留地近辺の住民間にツラレミアの確定症例20,疑似例8が発生した。全患者とも2歳から31歳まで(平均6歳)のアメリカ原住民である。0〜9歳の居留地住民の罹患率は2%,10〜19歳0.2%,20歳以上0.2%であった。全患者中16人が男性,22人(79%)がダニに咬まれたと訴え,ウサギや動物死体に接触したり,ウサギ肉を食べた人はいなかった。

患者の大多数は発熱,頭痛,リンパ節炎を示し,頭部か頸部をダニに咬まれていた。これらの患者はダニに咬まれた部位を灌流している局所リンパ節に炎症をおこした。28人全例が頸部,顎下,後頭部,前耳部の何れかのリンパ節炎を示し,4人は耳下腺も腫大して臨床的にムンプス類似の症状を呈した。7人は咽頭炎をおこした。8人はツラレミア菌に対して160倍かそれ以上の血清凝集価を4回にわたって示し,12人は回復期血清1回だけが160倍かそれ以上を示した。8人の回復期血清は未決定であったが,臨床症状はツラレミアに相応していた。3人のリンパ節を吸引したが菌は分離されず,26人をストレプトマイシン,2人をテトラサイクリンで治療したところ,全員抗生剤治療によく反応した。

 環境調査をすると家付近の植物にはダニが少ないが,居留地の小川や河川付近の植物にダニが発見された。2居留地で検査をした63頭のイヌのうち46頭(73%)にダニが付着していた。植物とイヌの両方から採取したダニはDermacentôr variabilisと同定された。居留地で子供が遊ぶ地域から泥を3検体,水を3検体採取し,これらダニと同時にツラレミア菌の培養をおこなった。イヌ46頭中8頭(17%)のダニから菌培養が陽性であったが,泥と水の検体は陰性であった。ツラレミア分離菌の生化学的検査結果は7株がB型,1株がA型であった。

 大多数の家族は数頭のイヌを飼っていたが,居留地には野良イヌが多かった。ツラレミアが子供に圧倒的に多いのは,彼らがイヌと頻繁に接触し,ダニの棲息している地域の戸外で動きまわることによるようである。

 防疫対策として推奨されていることは,居留地住民にツラレミアに関する教育計画を継続し,イヌに防ダニ粉末剤(6%マラチオン)をふりかけ,ダニが棲息しないように家の周囲の草刈りをすることなどである。

(CDC,MMWR,33,42,1984)






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