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Vol.5 (1984/6[052])

<特集>
ヘルパンギーナ


ヘルパンギ−ナは毎年夏期に流行する乳幼児の急性熱性疾患である。図1は厚生省サーベイランス事業において報告された最近3年間のヘルパンギーナ患者発生数と,病原微生物検出情報に報告されたウイルス分離数のうちヘルパンギーナ患者からの検出数を示したものである。患者発生数は全国集計における一患者定点あたりの週間発生数で,年間報告総数は1982年は約11.6万人,1983年は9.7万人であった。いずれの年も6月に発生が始まり,7〜8月に高いピ−クをもつ極めて類似した発生パターンである。

 ウイルス分離状況では,ヘルパンギーナ患者からウイルスが検出された報告数は1981年は309,1982年は377,1983年は320例であった。主なウイルスはコクサッキーA群で,各年それぞれ74%,82%および70%を占めている。コクサッキーA群のうちヘルパンギーナから分離される型は主として2,3,4,5,6,8,10型とされている。図1で最近3年間の動向をみると,毎年複数の型が流行しているが,主な流行型は年度により入れ替っている。たとえば1983年に主流となった2型(23%)および6型(22%)はこれ以前の2年間は少数または中等度に検出されていた型である。逆に前年主流だった3型(23%)または4型(23%)は1983年は全く分離されないか,または中等度の分離数となった。

 ヘルパンギーナの患者からはこれ以外に小率にコクサッキーB,エコー,アデノ,ヘルペス等が分離される。コクサッキーA群ウイルスが分離された検体は鼻咽喉材料188,糞便材料44で,9(4%)は両材料から同時に分離されている(表1)。

 ウイルスが分離されたヘルパンギーナ患者の年齢分布には年度による差異はほとんどみられない。1歳(30%)が最も多く,4歳までが80%を占める。1983年中に0歳児からの分離が42例報告され,6ヶ月未満が12例あった(表2)。

 主なヘルパンギーナ関連ウイルスの総分離数に対する割合とその他の臨床症状をみると,コクサッキーA群ウイルスは9および16型を除けば分離例の63%〜90%がヘルパンギーナ患者から分離されている(表3)。



図1.ヘルパンギーナの患者発生状況とウイルス検出状況(感染症サーベイランス事業)
表1.ヘルパンギーナの症状のあったものの検体の種類別ウイルス検出状況(1983年)
表2.ヘルパンギーナの症状のあったものの年齢分布(1983年)
表3.主なヘルパンギーナ関連ウイルスの総分離数に対する割合とその他の臨床症状(1983年)





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