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Vol.5 (1984/2[048])

<外国情報>
シンガポールの輸入感染症,1977〜1982


 シンガポールではほとんどの伝染病のコントロールに成功しているので,最近の届出では輸入例の占める割合が増加している。主な理由はエンデミック地域との間の旅行者および労務者の増加である。三大輸入症はマラリア,腸熱(腸チフス・パラチフス)およびウイルス性肝炎である。1977〜82年の輸入例数を表1に示した。この輸入数は合計発生数からみると,マラリアは96.1%,腸熱は33.8%,ウイルス性肝炎は10.9%を占める。他の輸入例たとえばデング熱,日本脳炎およびコレラは5.7〜7.4%,ポリオおよびジフテリアはほとんどが輸入例である。非定住者を輸入例とみなすと,結核では全体の1/10(1528例),癩では1/5(91例)がこれにあたる。性病,下痢症,急性呼吸器疾患では情報がえられていないが,かなり多いことはたしかである。主に東南アジアとインド亜大陸における感染である。

 病原体が国内に拡がり,流行をおこすかどうかは,病原体の病原性,集団の感受性,環境条件およびサーベイランス機能の効率による。シンガポールでは,検疫ではなく,環境衛生改善,ワクチン接種および完全なサーベイランスによることを基本方針として採用している。国外へ旅行する者には適当なアドバイス(ヒトおよび食物の衛生,破傷風・ポリオ・HBのワクチン接種,マラリアの薬剤予防)が,また外国人労務者に対しては検査が実施される。医療関係者はエンデミック地域からの旅行者,帰国者の6週以内の何らかの症状をすべて疑うべきで,とくに薬剤耐性マラリア,クロマイ耐性S. typhiの導入の可能性に留意を要する。

(ENB,IX,12,72,1983)



Table 1: Imported communicable diseases by geographical area of origin, 1977−1982





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