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Vol.5 (1984/1[047])

<国内情報>
山梨県におけるAHCの流行について


 流行状況:山梨県感染症サーベイランス調査によると1983年8月初旬(第32週報)に甲府地区2名,吉田地区2名のAHC患者(以下AHCという)の発生報告があり,12月初旬(第48週)までの総計は1569名であった。

 また,眼科定点3地区のAHCの週別発生状況は図1(本号・特集図2)に示すように,甲府地区441名(28.2%),吉田地区812名(51.7%),北巨摩地区313名(20.3%)であった。

 次に年齢群別の発生状況では,図2に示すように,1歳未満3名(0.2%),1〜4歳は23名(1.46%),5〜9歳は48名(3.05%),10〜14歳は241名(15.3%),15歳以上は1254名(79.9%)であった。

 第39週(9月25日〜10月1日)における3定点からの報告では108名,同期間における県内各医療機関への照会の結果では約1300名のAHCの発生報告があり,定点報告の約12倍の発生であった。

 県教育委員会の調査によると,第48週までの県内各学校施設におけるAHCの発生状況は表1に示すように,小学校においては全県218校のうち87校(39.9%),中学校では102校のうち62校(60.7%),高校44校のうち43校(97.7%)の発生で,生徒の罹患率では,小学校246名(0.56%),中学校621名(2.28%),高校2074名(5.73%)が罹患した。

 また,多発患者の施設は小学校の場合,A小学校1063人中10人(0.9%),B小学校1002人中10人(1.0%),C小学校651人中9人(1.4%),中学校の場合,A中学校1070人中54人(5.0%),B中学校1658人中80人(4.8%),C中学校658人中74人(11.3%)であり,高等学校では,A高校715人中191人(26.7%),B高校548人中134人(24.5%),C高校823人中179人(21.7%)と各施設により流行状況は異なっている。

 その後,第49週以降のAHC発生は高校生3名のみで,流行が下火になってきた。

 ウイルス検索:10月6日(第40週)の甲府地区,吉田地区の眼科医よりAHCについてウイルス分離と血清学的検査を行った。

 検索はAHC患者の眼ぬぐい液22件について,LLC−MK2,HeLa,HEp2,HELの各細胞を用いて33℃および37℃でローラーチューブ静置法によるウイルス分離を行い,現在4〜5代継代分離中であるが,Entero 70型ウイルスは陰性で(Adeno 3型ウイルス1株分離),目下継代分離中である。

 甲府地区における患者の急性期血清10件,回復期血清6件についてLLC−MK2細胞を用い,Entero 70(J670株)ウイルスによる中和抗体価をマイクロ法により測定した。その結果は表2に示すように,6名中の5名にEntero 70ウイルスの抗体価の上昇が認められたが,Adeno 3型ウイルスの補体結合反応による抗体価の上昇は認められなかった。

 なお,1名のAHC発症後の下肢麻痺のケース(予後は良好であり,現在は復学中の高校生)では眼ぬぐい液,髄液,糞便,うがい液のウイルス分離を行っているが,現在3代継代中で陰性である。なお,中和抗体価の測定では,髄液:4倍以下,急性期(麻痺時)血清:16倍,回復期(10日)血清:128倍であった。



山梨県衛生公害研究所 三木 康
山梨県保健予防課 丸山 正弘


図2.年齢別・週別AHC患者発生状況(山梨県サーベイランス情報)
表1.山梨県下の各学校によるAHCの発生状況−教育委員会調査−
表2.患者からのAHCウイルス検索状況





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