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Vol.4 (1983/12[046])

<外国情報>
1983年3月以降の世界のインフルエンザ


 アジア:香港では3月にA(H3N2)のピークがあり,6月にA(H1N1)がこれにとって代った。シンガポールでは5〜6月にA(H1N1)が急増した。両国ともこの時期B型が少数分離されている。中国広東省の5〜6月の小流行からはA(H3N2)とA(H1N1)が検出された。8〜9月の北東部および南部の散発例の10株中7株はA/England/333/80(H1N1)型,2株はA/Dunedin/27/83(H1N1)型であった。台湾とタイでは6〜8月にA(H1N1)が分離されている。

 アフリカ:3,4月にマダガスカルで散発患者からA(H3N2)とB型が分離された。ヨハネスブルグでは7月にA(H3N2)の流行があった。

 オセアニア:ニューカレドニアでは3月にA(H1N1)が,ニュージーランドでは5月から南部の島でA(H1N1)が,中および北部ではA(H3N2)が主流だった。オーストラリアでは一部にA(H1N1)および少数のB型が検出されていたが,その後メルボルンに発生した流行では7株のA/Philippines/2/82(H3N2)型が分離された。フィジーでは8月以降たびたび流行があり,主に成人(20〜40才)が罹患,一部についてウイルス分離および血清学的にA(H3N2)感染が診断された。

 アメリカ:A(H3N2)の分離は3月にガイアナ,7月にウルガイで,ブラジルではピークが5〜6月の流行からしばしば分離された。ジャマイカの7月の発生およびコロラドでメキシコからの帰国者からもこの株が分離された。CDCにおける抗原分析では,これらの株のほとんどは今期ワクチンに含まれているA/Philippines/2/82(H3N2)類似株である。A(H1N1)は7月チリのサンチアゴと,4月にサンパウロの散発例から報告され,B型も少数分離されている。

 ジャマイカの例:7〜8月にキングストンで591人収容の貧民慢性疾患施設で19例が死亡する呼吸器疾患の流行があり,調査した8材料から4株のA/Philippines/2/82類似株が検出された。患者68例中66例は成人男子病棟居住者(328人中の21%)で,70〜89才が最高罹患率(35%)を示した。死亡に至るハイリスク群は心臓血管疾患,栄養失調および老人で死亡率53%(全体では28%)であった。この夏,この地方にインフルエンザ流行は報告されていない。

 註:最近のサーベイランスデータではA(H3N2)株がA/Bangkok/1/79からA/Philippines/2/82に交替したことを確認している。A(H1N1)が同時に伝播していて場所と時期により大きい流行をおこしている。B型はいつも通りの流行閑期にある。今冬の予測はまだできないが,上記ジャマイカの例のようにハイリスク群で激しい流行の可能性が常にあることに留意すべきである。インフルエンザワクチンはこのようなグループの発病と死亡を減少させるから,接種が推奨される。12月中旬以前に大流行はみられないので,免疫を春まで持続させるために中,晩秋にワクチン接種をすることが望ましい。

(CDC,MMWR,32,No.38,1983 WHO,WER,58,No.32〜46,1983)






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