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Vol.4 (1983/9[043])

<特集>
溶連菌感染症


 厚生省感染症サーベイランス情報の「溶連菌感染症」の対象は「咽頭炎,アンギーナが主体で,これに発疹を伴うものも含まれる」とされている。11〜12月にピークがあり,春および夏の休みの時期に減少する(図1)。1982年の年間一定点あたり患者発生数は全国平均26.6人(週あたり約0.5人)で,地域的には東北ブロックが多く,36.6人であった。

 患者の年齢(図2)は4〜6歳が最も多く,幼児および低学年学童の集団を中心とした流行を裏付けている。

 病原体情報システムにおいて医療機関の溶連菌分離が報告されている27県市の集計では,1982年中にA群4503株,C群338株,G群231株が報告された。圧倒的に多いA群菌分離数を月別に図1に患者数と対比して示した。A群菌分離状況は患者発生の動向とよく一致し,報告されている溶連菌感染症患者の主要病因であることが確認される。

 A群溶連菌の流行では特定の菌型が5〜10年の大きな波形で流行することが報告されており,1956年以降わが国で大きく流行したのはT6,T4,T12の各型である。A群溶連菌の型別を実施している地研・保健所の分離菌型別成績によると(図3),最近4年間T12型がいずれの年も首位を占めている(1982年は全A群の23%)が,近年は減少傾向にあり,代わりにT1およびT13型が徐々に増加している。これ以外ではT4,T6型の分離数が多い。

 レンサ球菌レファレンスセンター(神奈川衛研)の1982年の集計によると,猩紅熱患者から分離されたA群の菌型はT12型が50%(66/132),T1型が14%,T4型が7%,T6およびT22型が各5%である。咽頭炎からの分離菌型ではT12型37%(28/76),T4型24%の順である。

 1982年に分離されたA群溶連菌の薬剤耐性パターン(猩紅熱研究班資料,都衛研実施)を表1に引用した。猩紅熱患者からの分離菌(表1.A)ではTC・CP・EM・LCMの4剤のいずれかに耐性を示す株は全調査数の72%(86/119)に達し,薬剤別ではTC耐性71%,CP耐性54%,EMまたはLCM耐性はそれぞれ15%であった。TCおよびCPに対する耐性菌は菌型を問わず認められるが,EM耐性率は菌型によって著しく異なる。調査が比較的限られた地方からの菌株に限られているので,この資料のみから全般的な傾向について言及しがたいが,主要流行菌型であるT12型にEM耐性菌が多いことは注目に価する。猩紅熱以外の疾患の患者からの分離株(表1・B)では耐性頻度は全体でみると猩紅熱患者由来菌と同程度であったが,EM耐性菌は多い。またT12型では耐性菌が100%を示した。分離株はいずれもペニシリンGまたはアンピシリンに対し最低発育阻止濃度は0.1μg/ml以下であった。



図1.溶連菌感染症発生状況とA群溶連菌検出数
図2.溶連菌感染症患者年齢群別割合(%)1982年(感染症サーベイランス情報)
図3.A群連鎖球菌主要菌型の検出割合年次別推移(地研・保健所集計)
表1.A.1982年分離猩紅熱由来A群溶連菌の耐性パターン(猩紅熱研究会資料,都衛研実施)
表1.B.1982年分離猩紅熱以外の疾病由来A群溶連菌の耐性パターン





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