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Vol.4 (1983/8[042])

<外国情報>
高齢者のRSウイルスおよびパラインフルエンザ感染 1976〜82,英国


 RSV感染:1976〜82年に検査室から13,723のRS感染が報告された。この中に65才以上の者が192名(1.4%)含まれていた。感染は4種の方法によって同定された(ウイルス分離,蛍光抗体法,4倍以上の抗体上昇およびシングルの高抗体価)。ウイルス分離が初期は半数以上だったが,のちに蛍光抗体法が多くなった。しかし,高齢者では抗体測定が多く用いられている。

 肺炎,気管支肺炎が主症状87で,他に下気道,気管支または胸部感染38,全身的またはインフルエンザ様症状32,血小板減少性紫斑病3,心膜炎1,結節性紅斑1が報告された。

 老人病院発生例としては1976年2月,15人がインフルエンザ様疾患にかかり,発生1週間以内に7人,その後さらに1人が死亡した。残った1人からRSVが分離,2人は高抗体価を示した。1980年1月精神病室で27人発症,2人死亡。検査された6人中3人からRSV分離,2人は高抗体価を示した。同月,他の老人ホームで40人中16人が下気道炎を伴うインフルエンザ様疾患にかかり,15人が血清学的に診断された。感染源として同様の症状のあったスタッフが疑われたが,確認するに至らなかった。

 パラインフルエンザ感染:7年間に5,781例の検査室報告があった。このうち121人(2%)が65才以上で,56%が血清学的に,44%がウイルス分離で診断された。他の年令では蛍光抗体法が用いられる(11%)にかかわらず,高齢者の診断には用いられていない。

ふつう,パラインフルエンザは1および2型は11月に,3型は5〜6月に発生のピークがあるが,高齢者では少し遅れて,12月と7月がピークとなっている。

 患者の約半分56人は肺炎か他の下気道感染,1/4,37人は上気道感染を示し,高齢者では下気道感染の頻度が他の年令よりも有意に高い。

 7年間に高齢者の流行例が5例報告された。1型が1例,3型が4例である。1型の例は1976年12月,老人病棟で4人の男性が気管支肺炎で死亡した。有症者で検査された16人中9人と無症状の24人中4人が陽性であった。3型流行の最初の例は1977年3月,老人病棟で,検査された7人中3人からウイルスが分離された。次の例は1981年6月,自給自足ユニット制の老人ホームの1ユニットで4人発症,全員陽性であった。さらに1982年3月,ロンドン病院の老人病室で23人の患者とスタッフが感染し,1週間以上,鼻カタル,不快,のどの痛みと胸部感染症状を示した。ウイルスが7人から分離された。最後は7月,精神病院の患者の例で数人は老人だった。

 コメント:RSV感染,パラインフルエンザ感染とも,高齢者にはほとんどないとされているが,これらの例から,この両者の高齢者における感染は実際には考えられているよりは重症かつ一般的であるとみられる。

(CDR,83/19,3)






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