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Vol.4 (1983/7[041])

<国内情報>
宮崎県における恙虫病の問題点


 宮崎県では恙虫病の発生地は宮崎市以南のみであり,県北部では発生報告がない。このような恙虫病における地域的な差の説明を求めたく,本県内4つの地区(A,B地区は県南部,C,D地区は県北部に位置する)でツツガムシの生息状況,野鼠の恙虫病リケッチア保有状況または住民の抗恙虫病リケッチア抗体保有状況を調べた。

 ツツガムシは圧殺式捕鼠具を用いて捕えた野鼠から回収し,分類した。野鼠からのリケッチア分離には,野鼠の脾乳剤を検体としてエンドキサン処理マウスを用いた。また,住民の抗体調査については次のように実施した。住民の血清は保健所等の好意により得て,検体とした。A,D地区では50才以上,B,C地区では20〜60才が対象になっていた。抗体測定には蛍光抗体間接法を用いた。抗原としてはGilliamおよびKarp株(東大医科研より分与)を培養瓶中のGMK細胞で増殖させて(7〜10日)1回凍結融解後,細胞を含む培養液をプレート上にスポットして反応に用いた。

 ツツガムシの分布状況は,県北部と県南部では差があった(表1)。すなわち,恙虫病リケッチアを媒介すると考えられているツツガムシのうち,タテおよびフトゲツツガムシが県南部で生息しているのに対し,県北部では生息が確認できなかった。しかし,野鼠からのリケッチア分離はC地区で高率であった。住民の抗体陽性率は表2のごとく,県南部が県北部より高く,それぞれ6.5〜14.2%,0〜3.6%であった。

 このように,衛生動物学的および疫学的調査成績は,宮崎県での恙虫病発生の地域性という現象をよく説明しているように思われた。しかしながら,患者発生未報告のC地区で野鼠が高率に恙虫病リケッチアを有するのはどういうことであろうか。



宮崎県衛生研究所 川畑 紀彦


表1.ツツガムシの地域的分布
表2.住民抗体調査





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