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Vol.4 (1983/5[039])

<外国情報>
後天性免疫不全症候群(AIDS)−米国


 CDCでは1981年6月から1982年9月半ばまでの間に243例の死亡例を含む593例のAIDS患者の報告を受けた。報告された症例の51%がカポジ肉腫(KS)を合併しないPneumocistis carinii肺炎(PCP),30%がPCPを合併しないKS,7%がKSとPCPの合併症,残る12%がKSとPCPのいずれをも伴わない各種の日和見感染症(OOI)であった。KSを合併しないPCPの死亡率は47%で,PCPを合併しないKS(21%)の2倍以上だが,PCPとKSを合併したものは68%と3倍以上高い死亡率であった。KSとPCPを伴わないOOIでは48%の死亡率であった。

 AIDS患者発生数は1979年後半より半年ごとに倍増してきている。現在,毎日平均して1ないし2例の患者が診断されている。米国における症例の80%が主に東海岸と西海岸の6都市部に集中している。しかもこの分布は人口対患者比でニューヨークとサンフランシスコが全土の約10倍以上と偏っている。593例の患者は27の州とコロンビア区にわたっている。加えて,10の外国より41例の報告があった。AIDS患者の約75%が同性愛または両性愛の男性で,そのうち12%が薬物静注の濫用者であった。異性愛であることがわかった20%の患者(男性または女性)の60%が薬物静注の濫用者であった。全症例の6.1%が米国在住のハイチ人でその50%は同性愛者でもなく,薬物濫用者でもないことがわかっている。同性愛者でもなく,薬物濫用者でもなく,ハイチ人でもない60才以下の男性14症例のうち2例(14%)は血友病患者だった。

(CDC,MMWR,31,No.37,507,1982)

 疫学的観察はますますAIDSが感染性の因子によって起こることを示唆している。性的関係のある同性愛の男性のAIDS患者の集発は,このような因子が性的もしくは密接な接触により伝播することを示している。さらに,他にAIDSの危険性のある明らかな要因がなく,AIDSの男性と一定した性的関係のあった女性2例について細胞性免疫不全が報告された。1981年6月以降,かって健康であった女性がPCPあるいは他のAIDSに典型的なOOIになった症例が43例報告されているが,これらのうち13例はAIDSの危険性の明らかな要因がなく,そのうち5例は薬物静注濫用者の男性と一定の性的関係があった。それらの相手の男性はAIDSを思わせる症状にはかかっていなかったが,免疫学的検査により1例はリンパ球に異常が発見された。考えられるところでは,これらの薬物濫用者の男性たちはある感染性因子のキャリアーであり,彼らは発症していないが,彼らから感染した相手の女性にAIDSを起こしたのであろう。

(CDC,MMWR,31,No.52,697,1982)

 1983年3月4日までに,1200例を越すAIDS患者が34の州とコロンビア区と15の外国よりCDCに報告された。450例以上が死亡し,診断されてから1年以上を経過したものの致命率は60%を越えている。報告数は漸増しており,1981年には毎日平均1例が報告されていたのが,1982年終りから1983年初めには毎日平均3〜4例になっている。

(CDC,MMWR,32,No.8,1983)

 AIDSは先進国社会においてますます関心を呼んでいるが,その真に公衆衛生的な重要性はまだ未決である。それゆえにWHOは公衆衛生関係の政府および研究機関よりの情報を歓迎している。

 WHOのヨーロッパ地区では参加国による自発的なAIDSのサーベイランスシステムを開始した。定期的な報告がWERに掲載される予定である。

(WHO,WER,58,No.14,101,1983)






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