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Vol.3 (1982/12[034])

<特集>
感染性下痢症


感染症サーベイランス情報の下痢症患者発生数(乳児嘔吐下痢症+その他の感染性下痢症)は11〜3月に大きな山となった(図1)。この山は乳児嘔吐下痢症だけの発生数のパターンとよく一致する。発生に地域的特徴はみられていない。

胃腸炎症状をおこすウイルスの種類は非常に多い。図1には胃腸炎症状を伴ったウイルス分離例について,便からの分離ウイルスに限って,種類と数を月別に棒グラフで示した。ロタウイルスが圧倒的に多く2/3を占め,また,この分離数は下痢症患者発生のピークとよく並行するので,ロタウイルスがこの時期の下痢症の病因の主役であることがわかる。ロタ以外のいわゆる下痢症ウイルス(ノーウォーク因子,カリシなど)も,冬から春季に多く検出されている。さらに,上記以外のウイルスで胃腸炎症状を示し,なおかつ便から分離されたウイルスにはアデイウイルスおよびエンテロウイルスがあるが,これらはいずれも夏季を中心に検出される。

ロタウイルスが検出された年令は0〜1歳が80%を占めるが,これ以上の年令でも検出されないわけではなく,検査室からの検出報告では,すべての年令に陽性者があり,19歳以上の成人からの検出も7例報告されている。これは図2に示されているが,この図では検出材料を便に限らず,上気道材料等も含め,胃腸炎症状のあったものすべてからの検出数を年令別に図示した。

胃腸炎症状とウイルスの種類の関係について,分離ウイルスの総数と胃腸炎症状を伴った例の割合をウイルス別にみると(表1)ロタおよびその他下痢症ウイルスでは検出例の95%が有症者であるが,エンテロウイルスは9%,インフルエンザでは13%となった。アデノウイルスは胃腸炎症状18%であるが,この検出数中には電顕による形態的検出報告数が多く含まれるので,ウイルス同定上確実性に問題がある。



図1.感染性下痢症の患者発生状況とウイルス検出状況(感染症サーベイランス情報)
表1胃腸炎の症状のあったもの/総検出数(1981年7月〜1982年11月報告分)
図2.胃腸炎の症状のあったものの年齢別ウイルス検出状況(1981年7月〜1982年11月報告分)



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