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Vol.3 (1982/9[031])

<外国情報>
缶詰鮭による原因不明胃腸疾患


 英国で1982年4月〜7月に23件(28例以上)の発生が報告された。初発例は4月9日で3人がカナダ製缶詰鮭を摂食後発病,76才の女性が食道破裂をおこして死亡。ついで,4月中に11件の発生があり,健康であった28才男性が死亡した。この例は摂食30時間後に激しい嘔吐が始まり,発症48時間後に入院した時強度の脱水と視野のぼやけを訴え,その後1日で死亡した。ボツリヌス中毒が疑われたが,細菌学的検査で否定された。

 23件の報告例において,問題の鮭にさらされた者のうち4/5以上が子供や老人を含め発症している。潜伏期は1〜48時間だが,多くは8時間以内。嘔吐はほとんど必発だが,主要徴候としては1/3程度で,下痢・悪心・腹痛が半数程度。4人が神経症状(視力のぼやけ・複視・嚥下会話困難)を示した。症状はふつう1〜2日だが,少数は1週間以上続いた。23件中22件はカナダ製で5ブランド,多数バッチからなり数社のものである。1件はUSA製。缶詰の大きさも同一でない。

 ラボラトリー調査が広範に病院・保健所・食品衛生研究所で行われたがすべて陰性。神経症状を示した4例でボツリヌス毒素は陰性。重金属・既知の魚トキシンはいずれも陰性。一件に缶の接着に問題があったが他は異常なかった。

 缶詰鮭による同様の例は英国で1953年に1件(4名),さらに1978年〜1979年10月に7件(約30例)ソ連製鮭缶によって発生している。いずれもラボラトリー調査は陰性で,特に疑われたブドウ球菌食中毒は証明されなかった。いずれの場合も問題を指摘された製品は市場から直ちに回収された。他国ではこのような報告例はない。

 結論として,原因は不明であるが,前例と考えあわせ,ある条件下で未知の魚トキシンが鮭中にあるのかもしれないとも考えられる。これらの解明のためにCommunicable Disease Surveillance Centreは発生例の報告と検査材料の提供をよびかけている。

(CDR,82/32,3,1982)






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