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Vol.3 (1982/9[031])

<外国情報>
百日せきサーベイランス,1979〜1981(米国)


 1979年までのCDCによる全国的百日せきサーベイランスは,患者の年令・性・報告州名のデータにかぎられていた。しかし,1979年には疫学者の協力を得て,より詳細な情報を得るべく補助サーベイランスシステムを用意した。

 これによって,1979〜1981年の3年間に,1277症例が42州から集められ,とくにインディアナ州(185例),ワシントン州(125例),ニューヨーク州(105例)が最多報告州であった。患者の62%は1才以下であり,また,そのうち79%は6ヶ月以下の小児であった。これらのデータは1980年のMMWR報告と大差がない。

 米国小児科学会(AAP)と予防接種諮問委員会(ACIP)による現行法によれば,禁忌がないかぎり,3混(DTP)ワクチンは生後6ヶ月までに3回(第1期),その後,18ヶ月までに第4回目(第2期)の接種を受けるようになっている。ところで上記479例の百日せき患者(6ヶ月〜9才)のうち,33%は接種を受けておらず,60%は接種回数3回以下のものである。

 症状として72%に咳に伴なう吹気性笛音,41%に無呼吸,そして29%に肺炎があった。肺炎の頻度は6ヶ月以下の小児に最高で34%である。4才以下において,その頻度はDTPワクチンの接種頻度に反比例して高くなる。

 けいれん発作(seizures)は1277例中51例(4%)にみられた。うち29(56%)は6ヶ月以下の小児であった。統計学上有意ではなかったが,これもDTPの接種回数に反比例していた。脳症も0.4%の症例にみられた。すべて1才以下である。

 58%が入院したが,その多くはDTP3回以下の接種児である。4才以上の子供で入院したものはほとんどなかった。死亡は7例(0.5%)で,すべて1才以下の入院児で,予防接種は受けておらず,肺炎を併発していた。

 72%が検査成績から診断確認ができ,直接蛍光抗体法(DFA)によるもの46%,DFAと菌培養によるもの18%,菌培養のみによるもの8%であった。臨床症状のみの診断によるものが28%である。

 ワクチンの予防効果を知るために,287の患者が対象とされた。その家庭内感染率を予防接種を受けていない家族と3回以上接種を受けた家族とで比較し,5才以下の小児の場合のワクチン予防効果は82.4%であった。

 〔編集部註〕としてワクチンによる危険性についても付言している。最近の2つの調査によると,15752のDTPワクチン接種者のうち,64%に局所反応,50%に48時間以内の軽い全身反応がみられた。重症例として,9例にけいれん,他の9例に弛緩性,低反応性の発作がみられ,それぞれ,1/1750の率になる。それら18例中の17例は,発作後医師の診察を受けたが,その時点では正常に復していた。

 英国の最近の調査では,DTP接種に由来する神経系疾患の発生率は1/110,000接種であり,永久にその後遺症の残る場合は1/310,000接種である。

 米国では1980年の調査によると,子供の95%は入学前にDTPワクチン接種を受けており,この高い接種率によって百日せき流行の危険性はない。最近の日本や英国での経験により,以前の接種率が高くても,一度その接種率が低下すると流行のもどってくることが示された。また,costbenefitの分析によっても,DTP接種のbenefitは,接種の副反応のriskを上まわっていることが明らかにされている。ACIPもAAPもDTPワクチン接種の継続を勧告している。

(CDC,MMWR,Vol.31,25,July 2,1982)






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