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Vol.3 (1982/7[029])

<国内情報>
クラミジアの輸入オウム類からの分離について


 オウム病病原体Chlamydia psittaciが輸入愛玩鳥から分離された。オウム病は重要なzoonosisの一つで,C. psittaciに感染したオウム・インコなどの愛玩鳥等鳥類からヒトに伝播することが知られている。今回,1980および1981年に輸入された愛玩用オウム・インコ類462羽について,C. psittaciの分離を試みたところ,307羽(66.5%)からC. psittaciが分離された。

 1980年は4月から11月にかけて輸入されたもののうち242羽について検索した。これらの鳥は輸入後2週間以内に斃死,あるいは病的症状を呈したもので,元気沈衰,羽毛逆立,緑色下痢便が観察された。剖検では脾の腫大(通常の5〜10倍),肝の腫大,心嚢・気嚢の肥厚混濁がみられた。各臓器の塗抹標本をGimenez染色したところ赤染する基本小体が観察された。

 C. psittaciの臓器からの分離は肝・脾の20%乳剤をSPFの発育鶏卵に接種し,通常の方法に従って行った。分離されたChlamydiaは,電子顕微鏡による観察および補体結合反応により確認,同定された。

 鳥種別の分離成績を表1に示した。業者が輸入した1422羽中242羽が供試され,176羽(72.7%)からC. psittaciが分離された。

 インドネシアから3群300羽輸入されたワカケホンセイインコは91羽中70羽(76.9%)から分離された。ある1群の死亡状況およびC. psittaciの分離羽数を図1に示した。この群は100羽輸入されたもので,37羽が斃死した。斃死したもののうち26羽について検索したところ,25羽からC. psittaciが分離された。

 アフリカから輸入されたヨウムでは30羽中21羽(70%)から分離された。南米からのアオボウシインコ34羽では25羽(73.5%)から分離された。その他,インド,オランダ等から輸入されたオウム・インコ類においても50〜84.6%の分離率を示した。

 1981年は4月から10月にかけて輸入されたもの220羽について検討した(表2)。インドから3群約500羽輸入されたワカケホンセイインコは供試した108羽中全例から分離された。これらのインコは斃死したもので,脾の直接塗抹標本においても明瞭な基本小体が観察された。ワカケホンセイインコと同じparrakeetに属するルリハインコからは7羽中5羽,ビセイインコからは3羽中1羽,アキクサインコからは4羽中2羽からそれぞれC. psittaciが分離された。また,南米から輸入されたアオボウシインコでは8羽中6羽から分離された。その他,ボタンインコやオカメインコからも分離率約30%の割合でC. psittaciが分離された。全体として220羽中131羽(約60%)からC. psittaciが分離された。

 最近,徐らはヒトのオウム病の重症例や死亡例を報告しているが,医師による届出義務がなく,本症に関する統計資料はほとんどない。米国においては,近年愛玩鳥のオウム病が増加し,また,ヒトのオウム病も漸増していることが報告されている。著者らは国内産のオウム・インコ類についてもC. psittaciの分離を試み,1981年には一般家庭,小売店,動物園等から得た78羽を供試し,13羽からC. psittaciを分離している。また,C. psittaciの他に,家禽の伝染病として重要なニューカッスル病ウイルスも,C. psittaci保有鳥から分離されている。したがって,輸入愛玩鳥に対する監視およびオウム病の現況に関する調査検討が必要であると考えられる。なお野生のハト約800羽についてC. psittaciの検索を現在行っている。



岐阜大学農学部家畜微生物学教室 福士 秀人・平井 克哉・島倉 省五


表1.輸入後斃死したオウム・インコ類のクラミジア分離率(1980.4−11)
図1.ワカケホンセイインコの輸入後2週間の死亡状況(1980.10.3輸入)
表2.愛玩鳥からのクラミジア分離(某輸入卸し売り業者)





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