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Vol.3 (1982/6[028])

<国内情報>
Cox. A10ウイルスによる手足口病の発生


 島根県下でここ3年間連続して手足口病の発生がみられている。まず,1979年の前半はエンテロウイルス71,後半にCox. A16,1980年では引き続きCox. A16によるものがみられている。この2年間は比較的大きな規模の流行が続いたが,昨年の1981年は小規模な手足口病の発生があり,これからCox. A10が分離された。

 1981年の手足口病患者からのウイルス分離は37名から,便,咽頭拭い液,水泡液など58検体を採取,哺乳マウスと培養細胞(Vero,AG−1,HEK)によってウイルス分離をおこない,哺乳マウスにより37名中18名より23株(便由来7株,咽頭拭い液由来8株,水泡液由来8株)のウイルスを分離した。

 分離ウイルスはCox. A群の抗血清をもらい哺乳マウスでの中和法により全分離株はCox. A10と同定した。また,7名の患者血清の中和抗体価を測定し,全例に有意上昇がみられた。

 症状はCox. A16,エンテロウイルス71を原因とする手足口病より若干軽いと報告を受けているが3例にみられた同胞感染例の間でも症状の程度は一様ではないようである。

 患者の年令は1才から9才に分布しているが,3才以下が80%を占めていることは他のエンテロウイルス感染症と大差はない。この4才以上に患者発生が少ない点はCox. A10の大きな流行が1976年にみられており,その後に生まれた子供に患者が集中したものと考えられる。

 また,1981年にはCox. A10によるヘルパンギーナ,咽頭炎の発生もみられ,これらは7月を中心に6月から9月にかけて発生したが,手足口病は7月より発生はみられているものの,10〜12月に集中しており,エンテロウイルス感染症好発時期から若干ずれがみられる。

 ところで,Cox. A16,エンテロウイルス71以外で手足口病を起こす可能性のあるウイルスとしてはCox. A4,5,6,7,10があげられているが,水泡内容からウイルスが分離され,血中抗体が上昇している報告はCox. A5(Flewett 1961),Cox. A7(Baker 1979)のみであり,Cox. A10(Duff 1963)については便からのウイルス分離は陽性であったが,血中抗体の上昇はみられていない。



島根県衛生公害研究所 板垣 朝夫





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