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Vol.3 (1982/4[026])

<外国情報>
ペニシリナーゼ産生りん菌の世界的ひろがり


 ペニシリナーゼ産生りん菌(PPNG)株は依然として世界にひろがり続けている。表は1981年5月までにPPNGを同定している国々を示したものであるが,実際はこうした株を分離し,耐性試験を実施しうる検査サービスをもっている国にかぎられているようにみえる。能力ある検査体制をもっている国においては,過去18〜24ケ月間におけるPPNG例は2〜6倍に増加している。

 ペニシリンその他の抗生物質に多少耐性の上昇した株の存在は以前より知られていたが,それらによる感染は薬剤投与量をあげるか,用いる抗生物質を交替することによって治療できていたのである。しかし,現在世界の各地では,プラスミッド支配の耐性株の出現によって,ペニシリン治療の無効な患者の率が高まってきた。それにかわるべき有効な治療法はきめがたく,その結果,政府も患者も治療費をまかないきれない状況に至っている。他の治療法は大変高価であるので,効果が小さいと知りながらペニシリンが使用され続けているのである。このため薬剤耐性株はさらに選択をうけ,患者の感染期間の延長を招いている。こうしてりん病の伝播は拡大しつづけ,合併症をもつ患者の割合は上昇することが予測される。

 編集部註:米国におけるPPNG感染例は,1979年における328例から1980年の1099,1981年(はじめの9ケ月間)の1910に上昇した。こうした傾向はあきらかにフィリッピン,タイ,韓国を主とする輸入例の増加と,ニューヨーク,マイアミ,ロサンゼルスなど主要大都市における国内伝播が続いているためである。対策としては合併症のないPPNG感染例の初期治療に2gのスペクチノマイシンを用いることである。

(MMWR,Vol. 31,bP&2,1982)



 1981年5月までにPPNGの分離同定された地区





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