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Vol.2 (1981/12[022])

<国内情報>
眼結膜ぬぐい液からのウイルス分離について


茨城県においても本年7月より感染症サーベイランス事業が実施され,患者定点より情報の集積,検査定点より細菌,ウイルス等の検査材料が採取されている。眼科定点については県北,県中央,県南,県西地区から5医療機関が選定され,それぞれの定点より患者情報が報告されている。7月より10月までの3ヵ月間の患者情報は流行性角結膜炎596名,急性出血性結膜炎9名となっている。特に県西地区の定点からの報告が70%を占めていた。検体採取のあった水戸赤十字病院眼科における流行性角結膜炎からのウイルス分離について少数例ながら若干の知見を報告する。

ウイルス分離の結果は表1のとおりでアデノウイルス3型(Ad−3型)2株,Ad−4型2株,Ad−11型1株,Ad−19型2株,合計7株を分離した。急性出血性結膜炎疑いの1名からエンテロウイルス70の分離はできなかった。8月中に分離した4株については中和反応にてAd−3型,Ad−4型と同定されたが,9月に分離された3株は抗血清,1,2,3,4,5,6,7,8,11型の9種類にて中和されないため,予研ウイルス中央検査部吉井先生宛同定を御願いしたところAd−11型1株,Ad−19型2株と同定された。

Ad−19型については国内分離報告例が少ないところからこの患者について主治医より臨床症状等詳細を調査したところ表1中No.12の21才男性が感染源で,この男性は8月27日から9月5日まで16人のグループによるマニラ旅行中に感染(16人中3人発症)帰国時発症しており,この男性よりNo.11,47才の父親及びNo.10の22才女性が二次感染していることがわかった。臨床症状ではAd−19型感染の患者は他の患者に比較して症状が強く,22才の女性の場合は偽膜形成,結膜下出血,眼瞼出血,耳前腺腫脹,特に眼瞼浮腫が強く激症のようであった。

1968年から1981年10月までの国内における眼結膜ぬぐい液からのウイルス分離状況をみると表2の如くでAd−3型,Ad−4型,Ad−8型,Ad−7型,その他の順になっている。Ad−4型は1979年から報告がみられているが,Ad−19型は1980年に北海道で5株,1981年に京都で1株が分離されているにすぎない。Ad−11型の報告は出血性膀胱炎等泌尿器からの分離がみられるが眼結膜ぬぐい液からの報告はまれのようである。



茨城県衛生研究所 菊田益雄


表1.眼結膜ぬぐい液からのウイルス分離状況(水戸赤十字病院眼科)
表2.国内における眼結膜ぬぐい液からのウイルス分離状況





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