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Vol.2 (1981/11[021])

<国内情報>
愛知県における今夏の感染症サーベイランスより


今年の定点観測の特徴は,9年ぶりに無菌性髄膜炎が流行したことである。

当所では本年の4月から9月までに,162名の無菌性髄膜炎患者の検査を行った。

その結果は表1に示したが,患者は6月から急に増加し,7月にピークとなった。

分離ウイルスはCox. B2を38名から,Echo 11を8名,Echo 18を10名から分離した。

我々は昭和41年から定点観測を行ってきているが,これらのウイルスの過去の出現状況をみると表2に示すように,Cox. B2は従来は散発型のウイルスであった。Echo 11は昭和46年にプロトタイプとは抗原性の違うウイルスによって大流行を起こし,その後5年間は分離されなかったが,昭和51年から毎年のように散発的に分離されている。Echo 18は昨年9月に初めて分離され,その後11月に1例,今年1月に1例分離された。

我々は過去にエンテロウイルスの流行期を過ぎてから出現したウイルスが翌年に流行したというケースを経験しており,今年はEcho 18が流行するのではないかと見ていた。

これらのウイルスが分離された患者(昭和50〜56年)の年令は表3に示したが,Cox. B2とEcho 11は5才以下が多いが,Echo 18は0〜12才までどの年令層でも同じように分離された。

本年の無菌性髄膜炎が流行する直前の昭和55年10月から56年4月に採取した生後6ヵ月から12才までの159例の血清を用いて年令階層別抗体保有率を調べた。

図1に示すようにCox. B2とEcho 11は加令とともに保有率が上層する常在型のパターンである。このパターンからはCox. B2がどうして突然流行したのかは不明である。Echo 18は各年令層で10〜20%の保有率しかなく,このパターンからも,Echo 18の流行の可能性は大であった。しかし,実際には分離例はあまり多くない。この理由については今後の検討をまたねばならない。

Echo 18はウイルスのtiterがあまり高くならないこともあってTypingがむずかしい。我々はAGMK,HeLa,HEL を併用しているが,AGMKが一番分離率が良い(表4)。HELはあまり感受性が良くないようであるが,Echo 18のHELでのCPEは他のエコーウイルスとは違って全細胞がほとんど一斉にCPEを起こして脱落することはなく,くしの歯が抜けるように少しずつ脱落していく。こうしたCPEの違いはEcho 14などと見分ける上での手助けとなっている。



愛知県衛生研究所 栄 賢司


表1.無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離 1981年10月1日現在
表2.愛知県における定点観測からのウイルスの分離状況
表3.年齢別の分離状況 昭和50年〜56年
図1.CB2,Echo 11,Echo 18に対する年齢階層別抗体保有状況
表4.Echo 18ウイルスに対する各種細胞の分離状況





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