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Vol.2 (1981/8[018])

<国内情報>
鳥取県で流行中の無菌性髄膜炎


〔1〕発生状況

鳥取県では5月下旬頃より無菌性髄膜炎が多発し,県健康対策課が実施した県下の入院施設のある小児科医療機関での発生状況調査では7月15日現在,5月10名,6月54名,7月144名の計221名にのぼっている。

今回の流行は5月下旬に鳥取県中部地区とこれに接する岡山県北部を中心におこり,この流行は7月に入り,東・西部に広がっている。

今回の流行の特徴は

(1) 罹患者の年令層が広い(表1)。患者は3ヶ月の乳児から44才にわたり,特に8才以下の小児と,子供と接する20〜35才の人に多くみられる。

(2) 同胞および家族内感染が多い。

保育所で同時期に4名の入院患者がでた。或いは家族内で父親と3人の子供が罹患したという情報もある。

(3) 症状は軽く,長くても一週間で治癒し,後遺症もないようである。髄液中の細胞数も,例年の髄膜炎に比較し少ない傾向にあり,不全型もみられる。熱は38〜39℃のものが多く,咽頭発赤はあっても軽い。嘔吐,頭痛は必発である。

(4) 発疹のある患者はみられない。

等である。

〔2〕ウイルス検索

患者材料からのウイルス分離はまだ分離中のものも含め7月30日現在,表2の成績がえられ,127名の患者材料から65名,78株のウイルスが分離されている。

当所では通常AGMK(大日本製薬より購入),VERO,FL,HEp−2を用いているが,ウイルスはAGMK細胞でのみ分離された。分離ウイルスはVERO,FL,HEp−2,HEL−R66,LLC−MK2細胞に継代できず,以後の分離同定にはAGMK,MK(岡山衛研より分与),AG−1(島根衛研より分与)細胞を用いている。

同定は最初に分離された6株について行ったのみであるが,予研分与のSchmidt pool(20u)では2と8(Echo 14)および2と11(Echo 18)の組み合わせでおさえるが,break throughがおこり,判定できなかった。11よりは8のpoolをやや強くおさえた。また,Echo pool(20u)でも3と5(Echo 14),3と7(Echo 18)の組み合わせでおさえたが,break throughがおこった。そこで,Echo 14とEcho 18を疑い,手もちのEcho 14単味血清をあててみると100uでおさえ,30uでは2〜3日後にbreak throughがおこった。Echo14の場合はbreak throughがおこりやすいことは知られており,Echo 14を疑った。

しかし,その御同定をお願いしていた予研原稔先生より途中経過がはいり,Echo 14よりはEcho 18の方が疑わしいとのことです。今年の髄膜炎の起因ウイルスは人さわがせなウイルスのようです。



鳥取県衛生研究所 石田 茂


表1.年令別発生状況
表2.ウイルス分離状況





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