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Vol.2 (1981/5[015])

<外国情報>
1980年度事業報告書概要および1981年度の方針


1.1980年度の成果 1979年中に微生物検査情報システムが開発され,1980年1月以降病原微生物検出情報が月報として定期的に刊行された。この集計は予研インフルエンザセンターおよび腸内ウイルスレファレンスセンターを経由してWHOへ報告されている。また,国内では部分的に「予防医学ジャーナル」および「医学のあゆみ」に掲載されている。また1979年分については年報として発行された。

本研究班の目的はこれら情報収集システムの確立にあるが,個々の問題についてみると次のような成果があげられよう。

(1) 海外旅行者の検査が伝染源の探索のために最も効率のよいものであることをはっきりさせることができた。(2) 1979−1980年のインフルエンザの流行はA(H1N1),A(H3N2),B型の混合流行であったことを検査情報が速報性をもって患者情報を裏付けた。(3) 統計的情報以外に予研と地研および各地研間の情報交換が月報を利用して行われ,相互の検査技術向上に資することができた。(4) 集計された成績は病原微生物検出の全国的集計としてはわが国では初めての広範かつ膨大なもので,行政的にも,疫学的見地からも価値ある資料であり,また今後の活動の基礎となるものである。

2.伝染病院検査情報の収集について 実行委員会は1980年度目標を伝染病院検査情報システムの整備においた。この問題は斉藤誠(都立墨東病院院長),今川八束(都立墨東病院感染症科部長),松原義雄(都立豊島病院感染症科部長)の三氏を中心に検討された。初年度は急性感染性腸炎(腸チフス・パラチフスを含む)として入院した患者に関する情報に限って収集する方針とし,呼吸器疾患等の病原体については次年度以降の研究課題とした。情報収集には従来のものとは別に「感染性腸炎患者調査票」(マークシート式個票)を作製,報告は1981年1月にさかのぼって,以後毎月の退院例について翌月25日までに情報センターへ送付される。集計のためには地研情報とは別ファイルを作製する。これは地研からの報告と重複例が避けえないとみられること,および地研情報と異なり,菌が検出されない例についても報告される患者情報システムをかねていることによる。すでに個票の印刷を終り,情報収集が開始される状況にある。

3.厚生省感染症サーベイランス事業との関連

実行委員会としては,厚生省事業は本研究班の事業とは互いに相補うものであって将来は一元化されるべきものであろうが,現時点では主として予算上の構成から別組織であると解釈した。しかし,厚生省事業で収集される情報のうち,診断を目的として実施される検査情報の収集については混乱を避けるため,情報を一本化して本研究班のシステムにのせて収集する方針とされた。これに関連して従来使用してきた報告票に若干の変更を加える必要が示唆されている。

4.月報に関する意見 実行委員会は協力各地研を対象にアンケート調査を実施した。調査項目中月報に関してめだった意見は,字がみにくいこと,配布部数をふやしてほしいことさらに,その月の検出情報についての直接の解説,トピックスあるいは全国的視野にたった総合的情報解説の要求であった。これらの問題はCDC週報やWHO週報ではすでに実施されている内容であり検査情報の還元,利用のためには必須の要因であって,検査情報システムにおいてはセンター機能が充実されることが絶対的必要条件であることを意味している。

5.1981年度の方針 1981年度の目標は検疫所検査情報および一般病院の検査室情報を収集するシステムを検討することである。このために,検疫所管理室および衛生検査技師会微生物検査研究班に事業への参加を求めている。

さらに研究班は3年を研究終了の目途としているので,厚生省事業との関連と併せ,1982年度以降に本研究班の事業が恒常的組織へスムースに移行できるよう問題点が検討される。

患者発生情報と病原体検出情報とはドッキングできれば最も理想的であるが,現段階では無理であり,現状では互いに独立に収集した結果を総合判断するということで十分感染症サーベイランスに役立つというのが共通認識になっている。この線にそって厚生省事業との関連が検討されることになろう。






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