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Vol.2 (1981/3[013])

<国内情報>
百日咳の定点観測(昭和52〜55年)


栃木県では百日咳ワクチン接種の基礎資料の目的で昭和52年から,栃木県伝染病予防調査協議会のサーベイランス事業とし,県内47ヵ所の定点から臨床診断による届出患者数の把握と,15ヵ所の特定定点から菌検索,血中凝集抗体価測定を続けている。47ヵ所定点からの届出患者数は,昭和52年度(各年度:4月〜3月)は444名,53年度は1,856名,54年度は2,293名,55年度(4月〜12月)は552名である。これを季節別にみると,52年度は春期(4,5,6月),53年度と54年度は夏期(7,8,9月),55年度は春期が35%以上を占め,4ヵ年の総届出数5,145件の分布は,53,54年夏期にピークのある二連峰型を示した。15ヵ所の特定定点からの菌検索患者数は,52〜55年度各,137名,300名,130名,69名であるが,これは届出数,季節別数に比例していない。これらからの菌陽性数は,52〜55年度各,19株(13.9%),56株(18.7%),54株(41.5%),19株(27.5%)である。県内を南,中,北に区分してみた菌検索数と菌陽性数は,52〜55年度各,257名中105株(40.9%),153名中12株(7.8%),226名中30株(13.3%)であるが,これは必ずしも地域特性ではなく,定点特性と考えられる。年令別にみた菌検索数と菌陽性数は,52〜55年の4ヵ年で,0才が162名中44株(27.1%),1才は155名中35株(22.6%),2才は108名中19株(17.6%),3才は60名中12株(20.0%),4才は59名中20株(33.9%)で,年度別では54年度の2才以上のものが陽性率50%以上を示した。52〜55年度中,菌検索をしたもののうちで,ワクチン歴の有無が明らかな603名中,ワクチン歴有(全てT〜U回接種のみ)は76名,うち菌陽性者が11名(14.5%),ワ・歴無は527名で菌陽性者は132名(25.0%)で,各年度の菌陽性者のワ・歴無がワ・歴有の10〜20倍を占めた。52〜55年度中の503名の血中凝集抗体価,10倍以上の保有率は,ワクチン株には,62.3%,74.4%。87.2%,83.6%,分離株には,80.1%,91.5%,95.2%,97.3%で,分離株にやや高い抗体保有率を示した。これを年令別にみても各年度で,4才までは分離株に高い値を示した。またこれらの83.3%のものがワクチン歴が無かった。52〜55年中の176名のペア血清(ワ・歴無)で回復期2管以上の抗体上昇を認めたものは,ワクチン株で31名(24.4%),分離株で42名(33.0%)で各年度でも同傾向であった。菌陰性ながら回復期に2管以上の抗体上昇したものが,ワクチン株で12名,分離株で18名あった。



栃木県衛生研究所 渡辺 恒明





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