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Vol.2 (1981/3[013])

<国内情報>
人のListeria monocytogenes 保菌について


Listeria症は人畜共通伝染病とされているが,人のListeria症患者で動物との関係が不明な症例も少なくなく,また,近年,白血病,悪性腫瘍などの入院患者に本症の併発が見られるようになっている。当所では本菌感染源調査の一環として,人の保菌についても調査している。すなわち,糞便約1gをPlymyxin B加ブレインハートインフュジョン(以下BHI)に混入,4〜5℃で14日間増菌,その1白金耳を亜テルル酸カリ加BHI寒天で,30℃48時間分離培養を行い,成人1,446名から7株(0.5%),子供454名から1株(0.2%)分離した。分離株は当初β溶血性が不明瞭であったほかは,グラム陽性の短桿菌で生化学的症状はL. monocytogenesに一致した。標準株及び分離株のO抗血清間の交差吸収試験ならびにH因子血清の凝集反応により,分離株は1a型1,1b型4,3a型1,4b型及び4f型1株に型別された。このうち,3a型と4f型は国内初の検出である。マウスのLD50は106.43〜108.47(Behrens-Karber法)で,斃死マウスの肝,脾に黄色斑点が見られ,病理組織学的に,両臓器に限局性の壊死巣が認められた。抗生剤感受性試験では,PC−G,CER,CP,TC,EM,SM,KMに感受性,CEXには耐性であった。

このところ,他の基礎疾患で入院加療中の患者に本菌による髄膜炎や敗血症の併発死亡症例が見られているが,本調査で人の保菌が0.5%のこと等から,今後,日和見感染あるいは院内感染について考慮する必要があると思われた。



新潟県衛生研究所 本間 宏





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