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Vol.2 (1981/2[012])

<国内情報>
最近の無菌性髄膜炎について


無菌性髄膜炎(以下AM)は主にエンテロウイルス,ムンプスウイルス,ヘルペスウイルス等を病因とし,夏から初秋にかけて好発する小児の感染症である。

わが国のエンテロウイルス髄膜炎の流行は,1960年にコクサッキーB(以下CB)5,1964年にエコー(以下E)4,1965年にE6,1967年にE9,1971年にE11により全国的な規模で発生し,また,その間に地域的な小流行も,CBやECHO各型により発生した。一方,コクサッキーA(以下CA)16はHFMDの主要病因ウイルスとして知られ,1970年に全国的大流行がみられた。続いて1973年に再度本症の大流行があり,新しくEntero71が病因ウイルスであることが確認された。しかしながら,この症例ではHFMDの他に,AMの併発例を多数経験した。さらに1978年に,再びEntero71によるHFMDの全国的な流行がみられ,また,AMの併発例も報告されている。

ところで,松江市におけるAMの発生状況は表1,2のごとくである。前述した全国的な流行は当地でもみられ,1964年のE4,1965年のE6,1971年のE11を認めている。また1968年のCB5,1969年のCB3によるAMの流行は,ウイルス分離において全体の60%以上をしめ,当地方での主流行例と考えられる。しかし,その後は散発例に止まり,CA,CB,ECHO,Entero71等の多様なウイルスを分離しているが,AMの症例は減少傾向が認められる。また,エンテロウイルスの流行では一般的に,出現ウイルスの周期性が認められているが,当地のAM流行では,1972年以降,散発的に多種類のウイルスが分離され,明瞭な周期性を認めることはできない。一方,1980年にCA16を2株分離しているが,AMからの分離例は今まで経験がなく,今後検討したいところである。

3頁の表は,わが国における1979年5月から1980年末までのAMからのウイルス分離状況を当情報からまとめたものであるが,これによれば,最近わが国での集団発生例は察知されない。表にみられるように多種類のウイルスが分離されている。これは地域特性とも思考される。しかしながら,今までに全く出現をみていないE18の分離例(第11号)は今後このウイルスによる流行がどのような形で出現するか案じられる。



島根県衛生公害研究所 石原純子


表1.松江市における無菌性髄膜炎の流行
表2.松江市における無菌性髄膜炎からの分離ウイルス





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