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Vol.2 (1981/2[012])

<国内情報>
Echo−6型ウイルスによる無菌性髄膜炎流行例からのウイルスの分離同定


無菌性髄膜炎の原因となるウイルスは多いが,なかでもエンテロウイルスのそれは頻度も高く,また大きな流行となる場合も多い。

最近5か年間の広島県での無菌性髄膜炎患者から分離されたエンテロウイルスに限ってその型と,その前後の分離状況を図に示した。手足口病に伴なう髄膜炎などの例は含めなかった。これによるとCox.A群では9型,Cox.B群では2および5型,Echoでは6,9, 11,17および21の各型が 分離され,少なくともこれら8つの型のエンテロウイルスがこれにかかわっていたことになる。これらのうちEcho−17および21型の分離は全国的にも少ないようであるが,その他の型のウイルスはこれまでしばしば報告されたものである。

エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の流行ないし集団発生等では,例によって主流となるウイルスが存在するのが普通なので,1978年西日本で地域的流行をみたEcho−6型ウイルスによる無菌性髄膜炎流行例のウイルス検索に当って,直接プラック法による分離同定も有用ではないかと考え,CPE法による分離同定と併せ試みた。

細胞はAGMK細胞を用いた。まずCPE法:プラック法の分離率を較べると,咽頭拭液では91.7%:72.2%,髄液では56.3%:25.0%,便では92.3%:46.2%(吸着30分およびdaiflon処理後吸着60分)であった。両法では培養期間も異なるし,またCPE法では継代分離で陽性となる場合もあるが,プラック法では普通継代分離は行わないのでいちがいに成績を較べられない面もあるが,分離率ではCPE法が高いようであった。特に便の場合その非特異的な細胞毒性によって細胞が障害を受け,CPE法ではどうにかそれに耐えられる場合でも,プラック法では明瞭なプラックとならない場合が多かった。この非特異的毒性の簡便な除去法があれば分離率も上昇すると思われる。次にこのプラック陽性の分離材料をプラック数が40/0.2mlになるよう調整したものと,20U/0.2mlのEcho−6抗血清とを混合,直接中和(37℃60分)し,100%プラック減少によって同定したもので大きな問題は認められなかった。

同定方法等については論議のあるところと思われるが,流行例などの場合のウイルス分離に際してCPE法とプラック法を併用すれば分離率を落さずに同定の迅速化,cloning,混在ウイルスの分離等以後の実験に有利な面もあるので多少の繁雑さはあるにしても是非検討してみたい方法ではないかと思っている。



広島県衛生研究所 武井直巳


最近5か年間の無菌性髄膜炎患者からの分離エンテロウイルス(広島県)





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