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Vol.2 (1981/1[011])

<国内情報>
北海道別海町における風疹の流行


別海町は北海道の東端にある知床,根室両半島に挟まれた根室海峡に面した広い町(1,334km2)で,人口約19,000,酪農を主とし,漁業も一部で営まれる。15才以下の小児は5,350人で、アンケート調査では初発が昨年1月に,病原診断では4月に発生し,9月末までに受診患児が380例をこえる流行がみられ,まだ発生が続いている。先に甲野が6号に記したように昨年は各地に風疹が発生しているが,特に大規模の発生であるので,その概略を述べる。

本町では町立病院が唯一の病院で,町民の大部分が町立病院で受診している。今回の流行で臨床的に風疹が疑われた小児患者の90%以上が組血清のHI反応によって血清学的に診断され,9月末までに339例(罹患率6.3)が確認された。また8月末に保育園,小中学校でアンケート調査が行われ,731名(罹患率13.7)の患者が報告された。年齢別の罹患率は図のようで,確認患者では3才が最も高率で,アンケートでは5才にピークがあるが,10才以上の年長児にもかなりの発生がみられた。なお1才未満の確認乳児は7例で,2〜6月の乳児2例があった。

月別の発生は確認患者で,4月10例,5月37例で,6〜8月がそれぞれ69,86,90例で,9月は48例に減少した。別海町は9地域に大別されるが,患者は4月上旬北部の中春別に初発し,西部地区に拡がり,中央部では5月下旬に初発患者をみ,さらに海岸部では9月に初発をみた。初発の中春別地域では上述の年齢別罹患曲線が他地域と異なり,3〜5才の好発が明瞭でなく,前回の全国流行時に或る程度流行があったのかも知れない。疫学調査は目下実施中である。

前回の全国流行時の道衛生部の調査で,稚内など北部と根室など東部では患者発生が少なかった。根室では54年11月に風疹の発生が確認され, 昨年春以降も釧路と共にかなりの発生があった。東部は北部と共に過疎地域で,風疹の流行間期のウイルスのあり方として注目する必要があるのかもしれない。



町立別海病院小児科 安田一平
北大医学部公衆衛生 石井慶蔵
札幌医大小児科 中尾 亨








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