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Vol.1 (1980/9[007])

<国内情報>
キャンピロバクター腸炎とその疫学


 下痢患者からCampylobacter jejuniの分離をおこなうとともに,対照として健康者の保菌をしらべた。また,重要な感染源と思われる食肉の汚染状況および家畜の保菌についても検討した。調査期間は1979年8月から1980年5月までの10ヵ月間である。

1.ヒトの下痢症

 下痢症の成人44例中1例(2.3%)および小児109例中18例(16.5%)から本菌が検出された。2才児にピークをみとめたが,季節的な変動はなかった。散発例では小児科領域の病原菌として重要視しなければならない。また,健康者の保菌は成人(調理従事者)181例中1例(0.6%)および小学生300例中5例(1.7%)であった。

2.食肉汚染と家畜の保菌

 市販ブタ肉,ウシ肉,ニワトリ肉およびニワトリ皮それぞれ133,87,97および37例についてC.jejuniをしらべたところ,ブタ肉およびウシ肉の汚染はみられなかったが,いっぽう,ニワトリ肉10(10.3%)およびニワトリ皮2例(5.4%)が陽性であった。

 家畜の直腸内容では,ブタ82例中32例(39.0%)ウシ75例中3例(4.0%),ニワトリ91例中37例(40.7%),イヌ107例中5例(4.7%)およびネコ88例中1例(1.1%)が陽性であった。

3.抗生物質に対する感受性

 各種薬剤に対する感受性パターン(MIC)は,GM:感受性,KM,CPおよびEMも少数の例外を除いて感受性,ABPCおよびNAは中間の感受性,TCは広範なバラツキを示した。CEZ:高度耐性,KMおよびEM耐性は患者株には認められず,健康者と家畜由来株にみられた。

4.血清型

 ヒト,食肉および家畜株から任意にえらんだ菌株のホルマリン死菌に対する抗血清をつくり,合計203株の血清型別をおこなった。型別不能24株を除き9菌型に分れた。

 患者株は8型に分布し,型1が主体であった。ブタ由来株は8型に分布し,おもに型5および6であった。ニワトリ株は6型で,型2,3が多かった。すなわち菌株の由来と血清型の間にはかなり明瞭な特異性がみられた。現在各地研における分離株を分与していただき,さらに検討している。



神戸市環境保健研究所 仲西 寿男,貫名 正文





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