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Vol.1 (1980/9[007])

<国内情報>
Campylobacterによる腸炎


 最近,我が国においてもCampylobacterによる腸炎の集団発生例および散発例が相次いで報告され,関係者に注目されている。

 Campylobacterは分類学的の属名で,この属にはC.coliC.fetusC.jejuniC.sputorumの4菌種があり,またC.fetusは2亜種(C.fetus subsp.fetusC.fetus subsp.venerealis),C.sputorumも2亜種(C.sputorum subsp.bubulusC.sputorum subsp.sputorum)に分類されている。

 前述のCampylobacter属のうち,ヒトの腸炎起病性が確認され,患者の発生頻度が高いことが明らかにされている菌種はC.jejuniである。

 C.jejuniは好気的にも嫌気的にも発育せず,5〜15%の酸素の存在下で発育する微好気性菌である。従って本菌の分離同定には必ず微好気培養が必要である。

 本菌による腸炎患者の集団および散発例は諸外国ではすでに多くの報告がある。

 我が国での症例を紹介すると,集団発生例は,1979年以降現在までに,東京で8例(患者493名),神奈川県1例(患者346名),山口県1例(患者701名),岩手県1例(患者695名),青森県1例(患者35名)が認められている。

 散発例は2,3の研究者によって報告され,その成績によると,散発下痢患者ふん便からの検出率は幼小児で12〜16%,成人で7〜8%と極めて高い値が示されている。

 従って我が国においても,本菌は腸炎起因菌として極めて主要な位置を占めることは明らかである。

 本菌による腸炎患者の潜伏期間は明らかでないが2〜7日と推定される。患者の主症状は下痢,腹痛,発熱で,嘔気,嘔吐は比較的少ない。幼少児の約半数は血便を排する。

 今後,集団下痢症,散発下痢症を問わず,その原因究明にあたっては,他の腸炎起因菌と併せてC.jejuniの検索を実施することが大切である。



東京都立衛生研究所 坂井 千三





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