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Vol.1 (1980/8[006])

<国内情報>
ヒトロタウイルスの電顕による検出結果について


 ヒトロタウイルス(HRV)は乳幼児下痢症の主要原因ウイルスであるが,乳児院のような閉鎖集団における流行例の調査ばかりでなく,開放系における散発例からの検出も重要であると思われる。私共も1974年以来,主として電顕(EM)を用いて流行性嘔吐下痢症のウイルス検索を行ってきたが,昨年より大阪府下豊中市の某小児科医院を定点として依頼し,外来患児の下痢便からウイルス粒子の検出を試みてきた。検出されたウイルスは主としてHRVであったが,その他アデノウイルス(本年月報第5号報告)及び径30nm前後の所謂小球型粒子も認められた。HRVのみに関する成績を別表にまとめたが,これには散発例と同時に某乳幼児における集団発生例も含まれている。HRVの検出にはやはり季節消長があって1〜3月に集中しており,この時期には,乳幼児下痢症の原因ウイルスとして重要な位置を占めているものと思われる。その後,気候が温暖になるにつれて検出頻度は漸減したが,最終的には5月まで陽性であった。

 以上のように,一小児科医を訪れる下痢症患者を調べただけで,HRVをはじめ高頻度にウイルス粒子が検出されることが知られたが,このことが直ちに地域的な流行があったことを示唆しているとは考え難い。今後更に調査を継続することにより,年度によって差があるのかどうかといったことも含めて地域的な流行の有無を知ることができよう。

 また,下痢症患者の症例集めについても,一機関だけでは能力に限度があり,ブロックごとの各地研の協力体制が組まれるならば,数的のみならず,地理的にも広汎な調査が可能となり,更に正確な知見が得られるものと思われる。



大阪府公衆衛生研究所 峯川 好一


表.電顕による乳幼児下痢症からのロタウイルス検出成績





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