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Vol.1 (1980/8[006])

<国内情報>
ロタウイルスの診断


 最近5年間に478名の乳幼児の急性胃腸炎患者からEM観察で284名にロタウイルス粒子を検出し,その一部に実施したCF反応やゲル二次元拡散法によって21名の陽性例を追加し,ほかにCF反応のみを実施した30名中20名にロタウイルス感染例をみた。次の2点の経験を報告する。

1) 補体結合反応

 EM観察とHRVおよびNCDV抗原によるCF反応を併用して陽性率を比較した。その結果はHRV−CFとEMとの差は僅少であったが,NCDV−CFは低い陽性率を示した(表1)。

 EM観察あるいはCF反応で陽性を示した急性期<1:4の者について,経過日数別の4倍以上の抗体価上昇を比較した。その結果はHRV抗原は10日後から高い陽性率を示したが,NCDV抗原では3週間後にならなければ高い陽性率を示さなかった(表2)。

2) ゲル二次元拡散法

 抗NCDV血清に対してNCDV抗原とHRV(EM陽性試料)を配してGD法を実施すると,NCDVの抗血清と抗原との間に2〜3本の沈降線が出現し,そのうちの1本の沈降線は抗NCDV血清とHRV抗原との間に生じる沈降線と完全に融合しており,GD法においてもCF反応同様にNCDVとHRVとの間に抗原の共通性を示す。230名の併用した結果では,EM観察によるウイルス粒子検出65.2%に対し,GD法57.0%のウイルス抗原を検出した。陽性例について2つの方法の一致は81.3%であり(表3),なお,不一致例におけるEM像は主としてEM(+)GD(−)例がウイルス粒子数が少数であった例であり,EM(−)GD(+)例はウイルス粒子の崩壊した像を認めた例であった。

 NCDV抗原によるCF反応や抗NCDV血清によるGD法はEM観察に比べると陽性率がやや劣るが,設備,操作,検査経費などからロタウイルスの診断に利用しうる方法であることを示した。



大阪市立環境科学研究所 堀田 毅


表1.EM検出とCF診断の比較
表2.回復期採血日によるCF診断の比較
表3.EM観察とGD法との検出の比較





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