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Vol.1 (1980/8[006])

<国内情報>
昭和55年1〜5月の札幌市におけるロタウイルスの検出について


 市立札幌病院小児科では従来から乳幼児の急性非細菌性胃腸炎の調査を行っているが1),昨年12月に当所にJEM100CXが入ってから患者便よりのロタウイルスの検出を開始した。

 対象は1月から5月までの40名の下痢症患者である。月別では1月14名,2月11名,3月7名,4月6名,5月2名である。年令別には1才以下14名,1才20名,2才1名,3才1名,5才以上4名である。性別は男23名,女17名である。

 電顕観察のための糞便処理はBishopら2),免疫電顕法はKapikianら3)の方法に準じた。

 1〜5月の採取材料からは13名からロタウイルスが検出された。内訳は1月3名,2月8名,3月1名,4月1名である。年令は11ヵ月から6才までであり,性差はなかった。

 1〜2月の8例の陽性例について下痢以外の臨床症状をみると,悪心,嘔吐,腹痛,高熱,せき,脱水症状等があり,1例は高熱,嘔吐のみで下痢はなかった。

 3名の患者のペア血清を用いて免疫電顕法を実施した。3例とも回復期血清とウイルス粒子の間に凝集像あるいは粒子への抗体の付着が観察された。また,急性期血清にはこのような所見はなかった。

 次にこの3名の患者のうち2名は母親も同時期に下痢症状を呈した。母親のペア血清を用いて免疫電顕法を行ったところ,回復期血清によるウイルス粒子の凝集あるいは抗体の付着がみられ,急性期血清にはこの所見がないことから母親もロタウイルスの感染であったと考えられる。

文献

1) 浦沢正三,秋葉澄伯:臨床とウイルス,Vol.7,339,1979

2) Bishop, R.F.et.al.:Lancet,1,1281,1973

3) Kapikian,A.Z.et.al.:J.Virol.,10,1075,1972



北海道立衛生研究所 桜田 教夫





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