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Vol.1 (1980/5[003])

<国内情報>
本年1月大阪で発生したポリオ容疑患者の検査結果について


 本患者は藤井寺市に住む生ポリオワクチンを服用したことのない母子家庭の8才の女児である。

1月6日に頭痛,咳,全身倦怠,翌7日に左腓腹筋部痛にともなう跛行が出現し,9日に左下肢脱力のため階段より転落し近所の医院で診療を受けた。10日に大阪市大病院へ入院しポリオの疑いが出てきたため,18日には大阪市立桃山病院感染症科へ移された。桃山病院検査室で22日に糞便からポリオ2型ウイルスを検出したため,予研へ行政検査の依頼があった。

 患者の1月22日の糞便と18日および28日の髄液からのウイルス分離の結果は,糞便のみからポリオ2型ウイルスを確認した。そこで,糞便中の2型ウイルスを2型抗血清で中和して,ポリオ2型ウイルス以外のウイルス分離を試みたが陰性であった。1月18日および31日の血清についてポリオ各型強毒株に対する中和抗体価を測定したところ,ともに2型に対して16倍を示したが,1,3型はすべて4倍以下であった。1月18日の血清は発病後12日以上経過しているので,発病前には1,3型と同様,2型についても全く抗体を保有していなかったと思われる。ポリオ2型ウイルスの感染が血清反応からも裏付されたといってよい。

 つぎに,分離された2型のウイルスのrctマーカーおよび血清学的型内鑑別試験の結果は,rctマーカーが(−)で,分離株はMcBride法,Wecker法とも生ポリオワクチンと同一抗原性を有すると判定された。

 以上の成績から本症例は,生ポリオワクチン2型株と区別できないポリオウイルスによる感染と推定される。患者の住んでいる地域での54年秋の生ワクチン投与は11月21〜28日に実施されているので,このとき接種を受けた子供から由来した可能性がもっとも強いので,本ウイルスの感染経路についての今後の病因疫学的検索が必要であろう。

 毎年,生ポリオワクチン行政投与後の事故例がきわめて僅かであるが発生しているのは事実である。しかし,本症例については乳児期に接種を受けていたならば予防できた事故と考えられ,改めて生ワクチン投与の必要性が証明された。

(なお,本件については3月2日付朝日,3月3日および4月18日付毎日の両新聞で報道されている。)

Editorial Note:

 ポリオ監視委員会によって確認された日本における1970年以降のポリオ生ワクチン関連症例は下表の通りです。



予研 腸内ウイルス部 原 稔








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