コクサッキーウイルスA6型による手足口病の流行―高知県
(Vol. 32 p. 268: 2011年9月号)

高知県における2011年の手足口病の患者発生は、年初から高知市内を中心に散発的な患者報告のみであったが、第22週に高知市内で注意報に、第25週には幡多地区で警報、安芸、中央東、中央西地区において注意報となり、県内全域でも注意報値を超える2.73となった(図1) 。第28週には幡多地区だけでなく高幡、高知市、中央西地区が警報値を超え、県全体が警報レベルの5.0以上の報告患者数となった(図2)。患者報告数における増加傾向は、2010年の手足口病の流行と非常によく似ている。

2011年第1週〜第28週までの手足口病およびヘルパンギーナ患者81検体(咽頭ぬぐい液79検体、糞便2検体) についてウイルス検索を実施したところ、スクリーニング用プライマー1) によるPCR法でエンテロウイルス陽性検体が72検体検出された。このうち咽頭ぬぐい液1検体からLLC-MK2細胞の第2世代で細胞変性が認められ、中和抗体により、コクサッキーウイルスA6型(CA6)が1株検出された。細胞に反応の見られなかった検体はエンテロウイルスVP1領域を増幅するCODEHOP VP1 RT-seminested PCR法2) を実施した。十分な増幅産物が確認できた咽頭ぬぐい液由来33株について、ダイレクトシークエンスによるVP1領域約290塩基の塩基配列を決定した。これらをBLAST検索したところ、33株はすべてGenBankに登録されているCA6と95〜98%の相同性を示し、さらに高知県で今年検出された株間の相同性も98〜100%であった。

エンテロウイルス属であるCA6は、主にヘルパンギーナの原因ウイルスとされている。しかしながら、本年の感染症サーベイランスにおいて分離されたCA6は、臨床診断名が手足口病検体から28株、ヘルパンギーナ検体から6株であった。また、高知県において2005年に本年と同様の流行を経験しており3) 、今後の動向に注意が必要である。

 参考文献
1)谷脇妙ら, 高知県衛生研究所報 54: 29-34, 2008
2) Nix WA, et al ., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006
3)千屋誠造ら, 高知県衛生研究所報 51: 37-41, 2005

高知県衛生研究所 松本一繁 谷脇 妙 藤戸亜紀 鍋島 民 細見卓司 松本道明 今井 淳

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