2010/11シーズンのインフルエンザウイルス検出状況―沖縄県
(Vol. 32 p. 169-170: 2011年6月号)

2010年第36週〜2011年第13週の沖縄県におけるインフルエンザ流行の概要を報告する。

患者発生状況:前シーズン終盤から患者発生が定点当たり0.53〜1.17人と、全国レベルより高いレベルで推移した状態(IASR 31: 297, 2010)のまま、2010/11シーズンは開始となり、2010年第48週に1.0人を超え、2011年第3週に63.17人でピークとなった(図1)。これは、全国のピーク(31.88人)と比べて約2倍高く、昨年の本県でのピーク(54.88人)の約1.15倍であった。その後患者は減少したが、第10週以降、再び増加傾向が認められた(図1)。

年齢別でみると20〜29歳が3,173人と最も多く、次いで5〜9歳3,071人、0〜4歳が2,963人、30〜39歳2,339人、10〜14歳2,289人、15〜19歳1,606人、40〜49歳1,248人、50〜59歳916人、60〜69歳387人、70〜79歳236人、80歳以上149人の順であった。週別患者数の推移では、20〜29歳が先行して流行し、その後若年層に拡大した(図2)。

重症例は第2〜6週の流行時に報告され、死亡5人を含む16人であった。このうちの15人は基礎疾患を有していたが、死亡例の1人は基礎疾患は無かった。ワクチンの接種歴は、接種3人、未接種5人、不明8人であった。また、重症例16人のうち12人はウイルスの型別が実施され、AH1pdmが10人、AH3亜型が2人であった。死亡例においてウイルスの型別が実施された4人は、いずれもAH1pdmであった。

ウイルス分離状況:医療機関にてインフルエンザまたは疑いと診断された患者211例の咽頭ぬぐい液を検査材料とし、リアルタイムPCR法によるウイルス遺伝子の検出およびMDCK細胞によるウイルス分離を実施した。PCRの結果は191例(91%)が陽性を示し、その内訳はAH1pdm121例、AH3亜型57例、B型13例であった。PCR陽性検体のうち151例(79%)でウイルスが分離された。国立感染症研究所から配布された2010/11シーズンキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を実施したが、AH1pdm分離株ではHA凝集反応性が低い株が多く、HI試験を実施できたのは93株中26株(28%)であった。抗A/California/7/2009pdm(ホモ価2,560)に対し、HI価160が3株、320が4株、640が14株、1,280が5株であった。AH3亜型分離株では45株中33株(73%)について実施し、抗A/Victoria/210/2009(同1,280)に対してHI価10が1株、80が2株、160が2株、320が4株、640が11株、1,280が13株であった。B型分離株では13株すべてについてHI試験を実施し、抗B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)(同640)に対してHI価40が2株、80が1株、320が7株、640が3株で、抗B/Bangladesh/3333/2007(山形系統)(同640)に対してはすべてHI価<10であった。

また、抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて、分離された86株のAH1pdmウイルスについてH275Yオセルタミビル耐性マーカーの有無を検索したところ、1株から耐性遺伝子を確認した。この症例は、オセルタミビルによる治療歴があり、検体は投薬が開始されてから10日目に採取されたことから、治療中に耐性を獲得した可能性が示唆された。

まとめ:2010/11シーズン前半は、20〜29歳を中心に患者が拡大したのが特徴であった。検出されたウイルスは、AH3亜型、AH1pdm、B型の3種で、シーズンの開始当初(2010年第36〜43週)はAH3亜型の占める割合が72%であったが、流行期(2010年第52週〜2011年第8週)はAH1pdmが89%、AH3亜型10%、B型0.9%となり、AH1pdmの検出数が最多となった(図1)。その後、流行は終息に向かうと思われたが、第10週からは再び患者の増加傾向が認められ、AH3亜型およびB型が検出されていることから、今後も動向を注視していく必要がある。

沖縄県衛生環境研究所 喜屋武向子 平良勝也 岡野 祥 仁平 稔 久高 潤
沖縄県感染症情報センター 久場由真仁
沖縄県福祉保健部医務課 松本直人 棚原憲実

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