食用として販売されていたサワガニからの肺吸虫メタセルカリアの検出(続報)
(Vol. 32 p. 172-173: 2011年6月号)

食用に販売された淡水産カニを感染源とする肺吸虫症例が続発したことから、食用のサワガニを購入して検査し、ウェステルマン肺吸虫および宮崎肺吸虫のメタセルカリア(人への感染能力を持つ幼虫)を検出した。この検査結果は本誌で報告し1) 、サワガニは食用として販売されていても、肺吸虫感染の原因食品として危険であることを指摘した。しかしながら、食用のサワガニを感染源と疑う肺吸虫症例の報告は、以降も続いている2,3) 。

そこで東京都内で食用のサワガニを購入し、452匹を改めて検査したところ、49匹(11%)からウェステルマン肺吸虫あるいは宮崎肺吸虫のメタセルカリアが検出された(表1)。

サワガニを喫食するのであれば、事前の温度処理が有効と考え、ウェステルマン肺吸虫(2倍体型)陽性のサワガニを用いて、実験的な検討を行った。その結果、加熱(55℃・5分間以上)4)あるいは冷凍(−18℃・ 100分間以上)したサワガニ由来のメタセルカリアは、実験動物に投与しても感染しなかった。このような成績も参照し、肺吸虫感染の原因食品となるサワガニについて、積極的な対応を進める必要があると考えられた。

 参考文献
1)杉山 広ら、IASR 29: 284-285, 2008
2)杉山 広ら、Clin Parasitol 19: 86-88, 2008
3)高木雄亮ら、呼吸器誌 47: 249-253, 2009
4)杉山 広ら、Clin Parasitol 21: 43-45, 2010

国立感染症研究所寄生動物部 杉山 広 森嶋康之 山崎 浩
国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部 春日文子

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