2011/12北半球インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株−WHO
(Vol. 32 p. 115, p. 118: 2011年4月号)

これは、北半球の次季インフルエンザシーズンにおけるワクチン株についての推奨である。南半球に対する推奨は2011年9月に行う予定である。

2010年9月〜2011年1月のインフルエンザの活動性:インフルエンザの活動性はこの期間中に、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアから報告された。パンデミックインフルエンザA(H1N1)2009 ウイルス[以下、A(H1N1)pdm09]は、アジア、ヨーロッパで優勢であったのに対し、A(H3N2) 亜型ウイルス[以下、A(H3N2) ]はアメリカ大陸で優勢であった。B型ウイルス(以下、B型)は北半球の多くの国で報告されており、数カ国では優勢な型となっている。以前の季節性A(H1N1) 亜型ウイルス[以下、季節性A(H1N1)]は、ごく少数の国から散発的に報告されているのみである。

インフルエンザA(H5N1) とA(H9N2) :2010年9月27日〜2011年2月9日に、カンボジア、香港、エジプト、インドネシアから高病原性鳥インフルエンザA(H5N1) のヒト症例14例(うち死亡6例)が報告された。2003年12月からの累計では、15カ国から 520例(うち死亡 307例)が報告されている。2010年9月〜2011年1月に、インフルエンザA(H9N2) のヒト症例の報告はなかった。

最近の分離株における抗原性の特徴:
A(H1N1) :世界的に報告されたウイルスの大多数がA(H1N1)pdm09で、抗原性はワクチン株A/California/7/2009と同様であった。季節性A(H1N1) はわずかに6例(中国、マレーシア、ロシア、チュニジア、米国)報告されており、そのほとんどの抗原性はA/Brisbane/59/2007に非常に類似していた。

A(H3N2) :ほとんどのウイルスは、抗原性がワクチン株A/Perth/16/2009 に非常に類似していた。

B型:B/Victoria/2/87 (Victoria)系統とB/Yamagata/16/88(山形)系統の両方が流行しており、世界的に前者が優勢である。しかし、中国では山形系統のウイルスが優勢で、Victoria系統も少数ながら分離が続いている。Victoria系統ウイルスの大多数は、ワクチン株であるB/Brisbane/60/2008と抗原性が非常に類似していた。一方、山形系統ウイルスは、過去のワクチン株であるB/Florida/4/2006と抗原性は異なり、B/Bangladesh/3333/2007、B/Hubei-Wujiagang/158/2009、B/Wisconsin/1/2010により類似していた。

抗インフルエンザ薬への耐性:A(H1N1)pdm09では、大多数がオセルタミビル感受性であったが、耐性ウイルス(H275Y 変異)も少数検出されている。その多くはこの薬剤投与との関連がみられているが、日本や英国など数カ国では、投与との関連がみられない耐性ウイルスも少数例報告されている。A(H3N2) およびB型ではオセルタミビル耐性は報告されておらず、ザナミビル耐性ウイルスも報告されていない。

検査したすべてのA(H1N1)pdm09およびA(H3N2) は、M2阻害剤であるアマンタジン、リマンタジンに耐性であった。

不活化インフルエンザワクチンに関する調査研究:現行のワクチンを含む3価不活化インフルエンザワクチンを接種された小児、成人、高齢者由来の血清を用いて、最近の分離ウイルス株について、赤血球凝集素(HA)に対する抗体価を赤血球凝集抑制(HI)試験により測定した。

A/California/7/2009 抗原を含むワクチンでは、ワクチン株により刺激されるHA抗体と最近のA(H1N1)pdm09で刺激される抗体は、HI抗体価の幾何平均値が同等であった。

A/Perth/16/2009 抗原を含むワクチンでも、ワクチン株により刺激されるHA抗体と最近の代表的なA(H3N2)で刺激される抗体は同等のHI抗体価の幾何平均値を示し、マイクロ中和試験でも同様な結果であった。

B/Brisbane/60/2008抗原を含むワクチンでは、ワクチン株により刺激されるHA抗体と最近のVictoria系統のウイルスで刺激される抗体の幾何平均値は同等であった。しかし、山形系統の株に対してはVictoria系統の株と比較して、成人で44%、高齢者で45%、小児で75%、それぞれHI抗体価の幾何平均値が低かった。

2011/12北半球インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株:
 A/California/7/2009 (H1N1)類似株
 A/Perth/16/2009 (H3N2)類似株
 B/Brisbane/60/2008類似株

(WHO, WER, 86, No.10, 81-91, 2011)

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