B型インフルエンザウイルス(Victoria系統)の局地的流行−横浜市
(Vol. 32 p. 47-48: 2011年2月号)

横浜市では2010年11月に2010/11シーズン最初の集団かぜの報告があり、B型インフルエンザウイルス(Victoria系統)を分離・検出し、抗原解析と遺伝子解析を実施したので報告する。

横浜市K区の小学校で11月15日に3学年在籍54名中30名が欠席し、このうちインフルエンザと診断された患者が15名であったため学年閉鎖となった。16日に5名の患者のうがい液と鼻かみ検体が搬入され、リアルタイムPCR検査を実施した結果、2名はB型と判定された。MDCK細胞による細胞培養では1代目にうがい液3検体(1検体は鼻かみ検体も)でCPEが観察された。

国立感染症研究所インフルエンザ研究センターから配布された2010/11シーズンキットを用いて、赤血球凝集抑制(HI)試験(0.5%ニワトリ赤血球)による抗原解析を実施した結果、Victoria系統の抗血清B/Brisbane/60/2008(ホモ価2,560)に対して1株がHI価320、2株がHI価640を示し、山形系統の抗血清B/Bangladesh/3333/2007(同2,560)に対しては3株ともHI価20を示した。また、A型抗血清のうちニワトリ赤血球に反応する抗A/California/7/2009pdm血清(同640)、抗A/Brisbane/59/2007血清(同640)に対してはそれぞれHI価<40、<10を示した。抗A/Victoria/210/2009血清(同640)に対しては0.75%モルモット血球を使用し、<10であることを確認した。

HA遺伝子の系統樹解析では、AH1pdmウイルスの流行が下火となった2010年3月の集団かぜ事例の株が属していたBrisbane/60クレード(N75K、N165K、S172P)とは異なっており、T37Iのアミノ酸置換した台湾/55/2009クレードであることがわかった(図1)。このグループはワクチン株のB/Brisbane/60/2008類似株群と抗原性状が異なることから1) 、今後の動向に注意が必要と思われる。

横浜市における2010年9月以降の患者定点医療機関からの迅速診断キットの報告では、これまでA型486件、B型187件とA型優位となっているが、当該区の報告は過去6週間でB型が131件と、全市183件の7割を占めており、他区とは異なりB型の局地的な流行がみられている(図2)。さらに、第49週には別の区の病原体定点でB型が分離され、第51週には隣接区の中学校でB型インフルエンザによる集団かぜが発生するなど、市中への拡大も始まっている。WHOのFluNet情報によれば、英国においてはB型が報告数の1/3を占め2) 、また、米国においては43%と報告されており(特に南東部は多い)3) 、シーズン最盛期に向けA型との混合流行が懸念される。

 参考文献
1) IASR 31: 253-260, 2010
2) WHO,FluNet QUICK REPORTS http://www.who.int/csr/disease/influenza/influenzanetwork/flunet/
3) CDC, MMWR Weekly 59(50): 1651-1655, 2010

横浜市衛生研究所
川上千春 百木智子 七種美和子 宇宿秀三 野口有三 池淵 守
田代好子 上原早苗 高野つる代 蔵田英志
横浜市健康福祉局
椎葉桂子 岩田真美 豊澤隆弘

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