沖永良部島の知名町における新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)集団発生―鹿児島県[最終報告]
(Vol. 31 p. 235-236: 2010年8月号)

病原微生物検出情報(IASR)Vol.31、No.6で<速報>を報告した。

リアルタイムRT-PCRで陽性であった9検体の鼻腔ぬぐい液をMDCK細胞に接種し、6検体からインフルエンザウイルスが分離された。

分離されたウイルス6株について、国立感染症研究所(感染研)から配布された2009/10シーズン新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)ウイルス同定用キットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を行った結果、抗A/California/7/2009(H1N1) pdm抗体 (ホモ価5,120)に対して、2,560〜5,120とホモ価に近い力価を示した。

遺伝子解析については、分離されたウイルス6株中の4検体(56歳・ワクチン未接種、15歳・季節性および新型ワクチン接種、8歳・新型ワクチンのみ接種、6歳・新型ワクチンのみ接種)について感染研に依頼し、情報提供を受けた。

解析の結果、4株とも遺伝子的には同一であり、ワクチン株A/California/7/2009(H1N1) pdmに対する抗原変異株で見られる153-156番目の領域のアミノ酸に変化はなく、抗原性がワクチン株と類似していたという結果を支持した。また、HA系統樹から、これら分離株は、流行の主流であるS203Tクレードに含まれていることが確認された(図1)。

一方、NA遺伝子の解析から、275番目のアミノ酸はヒスチジン(H275)であり、オセルタミビル感受性と思われた。

これらのことから、今回、沖永良部島「知名町」で集団発生した新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)株については、特に抗原の変異が認められないインフルエンザウイルスであり、昨年度流行したインフルエンザウイルスと同等のものと考えられた。

今回の沖永良部島での事例後は、県内では大きな集団感染は発生していないが、今後も季節型や新型インフルエンザの流行について、サーベランス等を活用し、その発生動向について監視していく必要がある。

鹿児島県環境保健センター
上村晃秀 御供田睦代 蓑田祥子 濱田まどか 吉國謙一郎 藤崎骼i 佐久間弘匡 三谷惟章

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