新型アデノウイルス53型と54型の同定について
(Vol. 31 p. 236-237: 2010年8月号)

感染症発生動向調査における眼科定点の届出感染症は、流行性角結膜炎(EKC)と急性出血性結膜炎の2つである。EKCを引き起こすのはアデノウイルスであり、アデノウイルスD種、ときにアデノウイルスB種による。これまで、アデノウイルスD種によるEKC は8、19および37型によるとされてきた。

アデノウイルスD種は、ウイルス分離に時間がかかることで知られ、中和反応で交差反応があることが知られている。近年、アデノウイルス22型近縁の53型1) および54型2) が新しい血清型(いずれもD種)として報告された。そして、これらのウイルスが日本国内において、流行性角結膜炎(EKC)の病原体として流行していることが報告され2) 、我々もその流行を確認しつつある(本号12ページ参照)。

アデノウイルスは、ウイルス分離および分離株の中和反応で同定されてきたが、最近は、アデノウイルスの全ゲノム配列(約35,000塩基対)を同定することによって新しい型として52、53、54および55型が報告された。これらのうち、53型および54型は日本でEKCの流行を引き起こしている。金子ら2) は、2000〜2009年にアデノウイルス陽性の結膜ぬぐい液776件のウイルスの塩基配列による同定で、37型(270件)、54型(159件)、53型(66件)、4型(40件)、8型(19件)および19a型(19件)を検出同定し、2005年以降のEKC患者からは8型は検出されていないことを報告している。

以上より、我々は迅速かつ高感度に53/22型および54型を検出できるLAMP法を開発した。この検査系を2010年3月に全国6カ所のアデノウイルス地区レファレンスセンター3) ならびに3カ所の地方衛生研究所(地研)の合計9つの研究所で評価したところ(表1)、ほぼすべての地研で同様の検出感度で陽性コントロールを同一感度で検出することができ、非特異的な増幅は報告されなかった。LAMP法による同定は、PCR-シークエンシング法より簡便で、手間と時間がかからない利点を持つ。本法は、53型と22型との鑑別はできないが、EKCの病原体としては、極めてまれで流行のない22型と53型との鑑別よりも、37型および8型との鑑別が、アデノウイルスサーベイランス上重要である。地研でこれらLAMP法を実施する場合、方法等の詳細については国立感染症研究所(感染研)または地区レファレンスセンターにお尋ねいただきたい。

また、時間と手間がかかるが、病原体検出マニュアル・アデノウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎、咽頭結膜熱)の検査マニュアル(感染研、地方衛生研究所全国協議会)に掲載されているアデノウイルスのDNA診断法4) でnested PCRを実施後にヘキソン超可変領域のシークエンス(1.8kbp)を決定し、さらにMiura-Ochiaiらの方法5) でヘキソンのC4領域の塩基配列(350bp)を決定してBLAST解析することで、8型、19型、37型、53型および54型の鑑別・同定が可能である。

新型アデノウイルス53型および54型はそれぞれ、アデノウイルス37型および8型との鑑別が重要であり、今回示したLAMP法あるいはPCR-シークエンシング法が有効である。

第9回国際アデノウイルス会議(ハンガリー、2009年4月)では、アデノウイルスを血清型でなく型とする方向性が示されている6) 。遺伝子検査法でアデノウイルスを同定した場合は、病原微生物検出報告の際に検査法を明記し、ウイルス分離および中和反応による血清型でなく、型として検出報告するべきと考える。

 参考文献
1)Walsh MP, et al .,PLoS One 4(6): e5635, 2009
2)Kaneko H, et al ., Br J Ophthalmol, in press
3)藤本嗣人, 他, IASR 31: 77, 2010
4)Takeuchi S, et al ., J Clin Microbiol 37: 1839-1845, 1999
5)Miura-Ochiai R, et al ., J Clin Microbiol 45: 958-967, 2007
6)Michael P, et al ., J Clin Microbiol 48: 991-993, 2010

国立感染症研究所感染症情報センター 藤本嗣人 花岡 希 岡部信彦
新潟県保健環境科学研究所ウイルス科 渡部 香
福島県衛生研究所微生物課 五十嵐郁美
東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科 長谷川道弥
福井県衛生環境研究センター保健衛生部 中村雅子
大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 加瀬哲男 廣井 聡
兵庫県立健康生活科学研究所感染症部 榎本美貴
神戸市環境保健研究所微生物部 秋吉京子 須賀知子
広島市衛生研究所生物科学部 阿部勝彦 山本美和子
宮崎県衛生環境研究所微生物部 三浦美穂 山本正悟

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