手足口病患者からのエンテロウイルス71型分離状況―愛媛県
(Vol. 31 p. 202-203: 2010年7月号)

愛媛県では、1999年、2000年、2003年および2005年に手足口病の比較的大きな流行が見られ、1999年のコクサッキーウイルスA16型(CA16)を除き、その他の流行年はすべてエンテロウイルス71型(EV71)が主な病因であった。今年は、定点当たりの手足口病患者報告数が例年より早い第7週から増加し始め、第15週以降急増し、県内全域に流行が拡大した。第20週には定点当たりの患者報告数が10.2人でピークとなり、過去10年間で最も多い数となった。

2010年2月20日〜5月10日までの間に、病原体定点医療機関から18名の手足口病患者の検体(咽頭ぬぐい液15件、糞便4件、髄液1件)が搬入され、11名からEV71が、1名からCA16が分離された()。EV71が分離された患者のうち1名は、無菌性髄膜炎を併発し入院していたが、重症化せず、早期に退院した。また、EV71が分離された手足口病患者は、すべて4歳以下であった()。

ウイルス分離には、18検体すべてにFL細胞、RD-18S細胞、Vero細胞を用いて、33℃で2週間、回転培養を行った。その結果、細胞変性効果は、Vero細胞では、EV71の11株中10株、RD-18S細胞では、EV71の8株に認められたが、FL細胞では認められず、Vero細胞がEV71分離株に対して最も高い感受性を示した。

EV71の同定には1978年の分離株を、また、CA16の同定には1995年の分離株を用いて作製した自家製抗血清を使用した。今回分離された株の中には、同定が困難な株はなく、判定は比較的容易であった。

流行初期に、CA16が手足口病患者1名から分離されたが、その他はすべてEV71が分離されていることから、今回の愛媛県における大規模な手足口病の流行は、EV71によるものと考えられた。

手足口病の患者報告数は、第22週現在、定点当たり8.3人と依然として多く、5月中旬以降も無菌性髄膜炎を併発している手足口病患者検体が搬入されている。また、本疾患は通常、夏季を中心に流行することから、今後の動向に注意が必要と考える。

愛媛県立衛生環境研究所
青木里美 青木紀子 山下育孝 田中 博 土井光徳

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