岡山県におけるイヌ・ネコのC. ulcerans 保菌状況
(Vol. 31 p. 206-207: 2010年7月号)

結果と考察
2009年8〜9月にイヌ27検体、ネコ85検体について調査し、分離した菌株についてApiコリネを用いて同定した。その結果、1地区のネコ4検体から分離された菌株のGlycogenの分解は陰性となり、ApiコリネではCorynebacterium pseudotuberculosis と判定された。他の異なる地区のネコ1検体から分離された菌株はC. ulcerans と同定された。これらの菌株はいずれもジフテリア毒素原性試験が陽性(Tox+)であった。しかし、ApiコリネでC. pseudotuberculosis と同定された4株(No.37、38、42、43)についてrpoB 遺伝子の塩基配列解析を実施した結果、C. ulcerans の配列と100%一致した(表1〔岡山〕)。したがって、rpoB 遺伝子の塩基配列の結果からこれら5株は最終的にC. ulcerans と同定され、ネコ85検体中5検体(5.9%)からC. ulcerans Tox+を分離した(表2〔岡山〕)。上記以外にネコ4検体(4.7%)の咽頭スワブについて実施したPCRの結果、やや薄いジフテリア毒素遺伝子の増幅バンドを検出したが、菌は分離できなかった。なお、今回調査したイヌおよび開業獣医で採取されたネコの咽頭スワブからは、これらの菌種は分離されなかった。

分離した菌株をPFGEにより解析した結果、岡山ネコNo.5株は大分ヒト由来株(大0510)と、岡山ネコNo.37、38、42、43株は岡山ヒト由来株(岡0509)と同じパターンを示した(図1〔岡山〕図2〔岡山〕)。

Apiコリネによる性状試験では、「Glycogenの分解」1項目によりC. pseudotuberculosis (陰性:赤色)あるいはC. ulcerans (陽性:黄色)と同定される。試験菌はマクファーランド濁度6以上の菌液を使用し、36±2℃で24時間培養後判定する。菌液の濃度が薄い場合や、培養時間が短い場合は、Glycogen分解の判定が異なる可能性がある。今回分離されたNo.37、38、42、43の4株は、接種菌液の濃度や培養時間を厳守して検査を行ったが、C. pseudotuberculosis と同定され、rpoB 遺伝子の塩基配列解析によりC. ulcerans と最終同定された。このことから、これらの菌株はGlycogen分解能の低い株である可能性が考えられたため、今後は生化学性状試験でC. pseudotuberculosis と同定された菌株については、rpoB 遺伝子の塩基配列解析等による確認が必要であると思われる。

岡山県環境保健センター細菌科
中嶋 洋 大畠律子 石井 学 岸本寿男
春名動物病院 木本有美
木口イヌネコ病院 木口 修
児島動物病院 赤木敏文
タキモト動物病院 瀧本良幸
鳥越動物病院 鳥越秀二
大阪府立公衆衛生研究所 勝川千尋
国立感染症研究所細菌第二部 小宮貴子

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