小学校集団発生から分離されたB型インフルエンザウイルス(Victoria系統)―愛知県
(Vol. 31 p. 173: 2010年6月号)

2010年5月に愛知県内の小学校においてB型インフルエンザウイルスによる集団感染事例があり、ウイルスが分離されたので報告する。

愛知県T市内の小学校で5月11日にインフルエンザによる欠席者がクラス40名中19名となり、3日間の学級閉鎖の措置がとられた。当研究所には迅速診断キットでB型インフルエンザと診断された児童を含む同小学校の児童11名(男6、女5)より12日に採取された検体(うがい液)が同日搬入された。MDCK細胞にてウイルス分離を実施したところ、初代培養5日目にすべての検体接種細胞にCPEが観察された。このウイルス培養上清液に対して0.5%ガチョウ赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、HA価は32〜128倍を示した。そこで、国立感染症研究所より配布されている2009/10シーズンインフルエンザウイルス同定キットにて赤血球凝集抑制(HI)試験による型別同定を行った結果、分離された11株は抗B/Brisbane/60/2008血清(ホモ価2,560)に対して1株がHI価1,280、残り10株はHI価2,560を示し、抗B/Bangladesh/3333/2007血清(同2,560)に対してはすべての分離株がHI価<10を示した。一方、抗A/California/7/2009pdm血清(同2,560)、抗A/Brisbane/59/2007血清(同1,280)、抗A/Uruguay/716/2007血清(同2,560)に対してはすべての分離株がそれぞれHI価<40、<10、<10を示し、分離された11株はB型インフルエンザウイルス(Victoria系統)と判定された。

2009/10シーズンにおいて5月末までに当研究所にて分離同定されたB型インフルエンザウイルスは他に5株(Victoria系統4株と山形系統1株)であった。Victoria系統4株では抗B/Brisbane/60/2008血清に対するHI価はホモ価の2倍以内、山形系統1株でも抗B/Bangladesh/3333/2007血清に対するHI価のホモ価との差は2倍であった。

今シーズンに当研究所で分離されたB型インフルエンザウイルス株16株すべてにおいて、同定キットに使用されたウイルス株との抗原性の違いはほとんど認められない。

愛知県では5月の第19週〜21週までの間に5件のインフルエンザ集団発生が報告されており、今後季節性インフルエンザの流行および新型インフルエンザの再流行に備えサーベイランスを強化し、その発生動向に注意する必要がある。

愛知県衛生研究所
安井善宏 藤原範子 小林慎一 山下照夫 藤浦 明 皆川洋子

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