2010/11北半球インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株−WHO
(Vol. 31 p. 110,114: 2010年4月号)

これは、北半球の次季インフルエンザシーズンにおけるワクチン株についての推奨である。南半球に対する推奨は2010年9月に行う予定である。

2009年9月〜2010年1月のインフルエンザの活動性:この期間中に世界各国で最も流行したウイルスはパンデミックインフルエンザA(H1N1)2009ウイルス[以下、パンデミックA(H1N1)2009]であった。北半球では通常のインフルエンザ流行よりも早く流行が始まり、2010年1月までに数カ国を除き終息傾向となっている。季節性のA(H1N1)亜型ウイルス[以下、季節性A(H1N1)]はわずかな報告にとどまり、A(H3N2)亜型ウイルス[以下、A(H3N2)]は散発的に報告された。B型ウイルス(以下、B型)はアジア、オーストラリア、ニュージーランド、およびアフリカとヨーロッパの数カ国、アメリカ大陸の多くの国々で報告され、中国では2010年1月までにB型がもっとも優勢となっている。

インフルエンザA(H5N1)とA(H9N2):2009年10月1日〜2010年2月17日までに、カンボジア、エジプト、ベトナムからインフルエンザA(H5N1)のヒト症例16例(うち死亡4例)が報告された。インドネシアからは2009年1月以降のヒト症例22例(うち死亡20例)が報告されている。これまでのところ、ヒト→ヒト感染が継続しているとの証拠はない。2009年10月、12月には香港からインフルエンザA(H9N2)のヒト症例2例(相互の関係なし)が報告された。

最近の分離株における抗原性の特徴:
A(H1N1):大多数がパンデミックA(H1N1)2009で、抗原性はワクチン株A/California/7/2009と同様であった。季節性A(H1N1)の抗原性はA/Brisbane/59/2007に非常に類似していた。

A(H3N2):抗原性はA/Perth/16/2009に非常に類似していた。

B型:B/Victoria/2/87系統とB/Yamagata(山形)/16/88系統が流行しており、前者が優勢である。前者はB/Brisbane/60/2008と抗原性が非常に類似していた。後者は、中国での分離株はB/Hubei-Wujiagang/158/2009、バングラデシュなどでの分離株はB/Florida/4/2006にそれぞれ抗原性が類似していた。

抗インフルエンザ薬への耐性:パンデミックA(H1N1)2009では、H275Y変異によるオセルタミビル耐性ウイルスが少数検出されており、その多くはオセルタミビル投与と関連している。A(H3N2)およびB型ではオセルタミビル耐性は報告されていないが、季節性A(H1N1)の多くはオセルタミビル耐性である。ザナミビル耐性ウイルスは報告されていない。ほとんどすべてのパンデミックA(H1N1)2009および多くのA(H3N2)はM2阻害剤であるアマンタジン、リマンタジンに耐性であった。季節性A(H1N1)の多くは感受性であった。季節性A(H1N1)の一部でオセルタミビルとM2阻害剤の両方に耐性であった。

2010/11北半球インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株:パンデミックA(H1N1)2009が世界的に流行しており、季節性A(H1N1)、A(H3N2)、B型は2009年9月〜2010年1月の期間では多くの国でわずかに確認されるにとどまっている。

2010/11シーズンではパンデミックA(H1N1)2009を中心にA(H3N2)とB型が流行する可能性が高い。最近の疫学的状況を考えると、季節性A(H1N1)は流行しない可能性が高い。これらに基づき、以下のワクチン株を推奨する。

  A/California/7/2009 (H1N1)類似株
  A/Perth/16/2009 (H3N2)類似株
  B/Brisbane/60/2008類似株

(WHO, WER, 85, No.10, 81-92, 2010)

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