オセルタミビル耐性新型インフルエンザウイルスAH1pdmの検出―大阪府
(Vol. 30 p. 270: 2009年10月号)

大阪で2009年5月中旬におこった新型インフルエンザの流行(http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/clinical_epi_osaka02.html参照)の中で、オセルタミビル(市販名タミフル)の予防内服が無効と考えられた家族内感染の1例からオセルタミビル耐性遺伝子をもつ新型インフルエンザウイルスAH1pdm(以下AH1pdm)を検出したのでその概要を紹介する。

家族内発生の初発は高校生の女子で、2009年5月15日発熱、17日のリアルタイムRT-PCR検査でAH1pdm陽性となった。その母親は18日からオセルタミビルの予防内服(治療用量の半量)を始め、27日まで服用した。しかしながら、その母親は24日頃から軽い風邪様症状を訴え、28日に発熱し、29日のリアルタイムRT-PCR検査でAH1pdm陽性と診断された。その後ザナミビル(市販名リレンザ)を服用して軽快した。29日の検体から分離されたウイルスのNA遺伝子の部分シークエンスを行った結果、オセルタミビル耐性を示すH275Y の変異が確認された。この遺伝子は季節性インフルエンザウイルスA/H1N1(ソ連型)との交雑に由来するものではなく、AH1pdmの変異であった。また、このウイルスの生物活性を国立感染症研究所で測定した結果、分離ウイルスはオセルタミビル耐性、ザナミビル感受性を示した。

なお、その他の家族2名のうち1名(初発患者の父親)はオセルタミビルの予防内服、もう1名は中学生の弟であり、当初よりザナミビルの予防内服をしていた。2名とも全く発症しなかった。その後オセルタミビル耐性ウイルスの伝播は認められなかった。また、女子高校生から分離されたウイルスはオセルタミビル耐性を示す遺伝子変異を有していなかった。

これ以後、日本でもオセルタミビル耐性AH1pdmの検出報告が続いている(http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/07/houdou01.htmlhttp://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/08/houdou01.html参照)。

今回の事例では、既に感染していたにもかかわらず、オセルタミビルを治療量の半量で服用し続けたために、AH1pdmがオセルタミビル耐性を獲得したものと思われた。このことは、予防内服のタイミングと服用量に注意することが必要であることを示したと思われる。一般的にオセルタミビル耐性AH1pdmは、現在のところ二次感染から感染拡大には至っていないが、A/H1N1季節性インフルエンザの例もあるので、これからサーベイランスを続けていくことは重要であろう。

大阪府立公衆衛生研究所
大阪府健康医療部地域保健感染症課
大阪府豊中保健所
国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る