ニューヨーク州における米国人旅行者でのサルマラリア、2008年−米国
(Vol. 30 p. 245: 2009年9月号)

最近のアジアからの報告から、ヒトへの感染が知られている熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形の4種のマラリア以外に、Plasmodium knowlesi と呼ばれるサルマラリアが5番目のマラリアとして注目されてきている。20種以上のPlasmodium がヒト以外の霊長類に感染するが、最近までサルマラリアはヒトには稀にしか感染せず、公衆衛生的意義は低いと考えられていた。サルマラリアの多くはヒトに感染した場合、光学顕微鏡では他のマラリアと区別ができず、診断にはPCR法とマイクロサテライト分析が必要となる。本症例は米国で数十年来初めて診断されたサルマラリアだが、最初のきっかけは光学顕微鏡での非典型的な形態であった。2002年マレーシアにおいて重症化する非典型的な四日熱マラリアの報告があったが、その半数以上がPCR検査によるとこのP. knowlesi であった。またマレーシア領ボルネオ島のサラワクでの2001〜2006年までの症例を遡り調査したところ、四日熱マラリアと形態学的診断されていた960検体のうち28%がP. knowlesi あったという。ヒトにおけるP. knowlesi 感染はマレーシア以外にシンガポール、タイ・ビルマ国境、フィリピン、中国雲南省、フィンランド(マレーシアからの帰国者)から報告されている。

今回の症例はマラリアの既往歴のない、25年前に米国に移住したフィリピン生まれの50歳の女性である。彼女は2008年10月17日にフィリピンに帰国し、Palawan島で過ごした。現地に滞在中は、この地域の旅行者に推奨されているマラリア予防内服や蚊の対策を取っていなかった。10月30日の帰国時には頭痛が始まり、その後発熱と悪寒が数日間続き医療機関を受診した。救急外来では低血圧と血小板減少を認め、血液塗抹で一時バベシア症と診断されたが、翌日にマラリアと診断された。しかし塗抹像が非典型的であり、種を特定することができなかった。患者はアトバコン/プログアニル合剤とリン酸プリマキンの治療で回復したが、その後、血液検体がニューヨーク州の寄生虫検査機関に送られ、PCR法によりP. knowlesi と同定された。

サルマラリアがヒトに感染するには、ヒトの赤血球がサルマラリアに感受性があること、罹患したサルが生息している森が近くにあること、ヒトとサルとを刺すハマダラカの存在が必要で、アジアと南米の多くの地域がそれらの条件に当てはまる。ヒトに感染する数種類のサルマラリアの中でP. knowlesi のみ重症化する可能性があるが、他のサルマラリアを含めてすべての種がクロロキン感受性である。しかし、正確な診断のために、アジアからの帰国者におけるマラリア、南米からの帰国者の熱帯熱マラリア以外の検体は、認定された州のラボかCDCに送られるべきである。

(CDC, MMWR, 59, No.9, 229-232, 2009)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る