アジア渡航米国人における日本脳炎の3症例、2003〜2007年−米国
(Vol. 30 p. 244-245: 2009年9月号)

日本脳炎ウイルス(JEV)は蚊によって媒介されるフラビウイルスであり、アジアにおける脳炎の主たる原因である。渡航滞在中におけるJEV 感染の危険性は低いとされているが、滞在地域、期間、季節と活動の内容によって異なる。定期サーベイランスおよび感染症鑑別診断の検査として、原因不明脳炎患者の検体がCDCに送付された。CDCにおける調査の結果、1992〜2008年までに採取された検体について4症例が日本脳炎と確認された。本報告では、これまで未報告の3症例について述べる。いずれの症例もワクチン接種歴がないアジア系移民とその家族である。3例は、発熱を伴う精神状態の変化があり、日本脳炎が認識されていたのはこのうちの1例のみであった。3例はその後回復したが、うち2例は神経系障害を残している。アジアへの渡航者で、その旅程に農村地域が含まれ、日本脳炎の危険性を認識していない場合は、感染の危険性が高まるだろう。

症例1:ミネソタ州に居住する30歳の女性。2003年8月21日に項部痛、精神混乱、言語障害を発症し、入院した。発症7カ月前にはタイ南部に滞在していた。7月30日にタイで犬に噛まれ、8月1日、4日に狂犬病ワクチン接種を受けた。8月7日に発熱のため入院し、抗菌薬の静脈内投与を受け翌日退院した。10〜14日に再び入院したが対症療法を受けた後、8月20日に帰国した。帰国後ミネソタの病院に入院し、狂犬病免疫グロブリン、副腎皮質ステロイド、狂犬病ワクチン接種を受けた。当初は髄膜脳炎と診断されたが、8月21日(14病日)に採取された検体でJEV特異的IgM抗体と中和抗体がCDCで検出された。入院数日後には精神状態が改善し、8月26日に退院した。

症例2:2005年7月26日にフィリピンからカリフォルニアに帰国中の航空機内で、68歳の女性が全身脱力、食欲不振となった。翌日に発熱、悪寒、嘔吐、乾性咳を発症し、7月28日に入院、抗菌薬の静脈内投与を受けた。患者は友人・親類訪問のためマニラに3カ月間滞在していた。入院数時間後、動揺、見当識障害を発症し、翌日に四肢痙性運動、上半身筋強直を伴う意識障害となった。3週間の入院加療後、自発呼吸が可能となり、発語能力をとりもどし、補助のもと歩行が可能になり、8月24日に退院したが、リハビリを継続している。発症から9日目に採取された検体がCDCに送付され、JEV特異的IgM抗体と中和抗体が陽性と判明した。

症例3:ワシントンに居住する9歳の男児。カンボジアに1週間滞在後、ベトナムに3週間以上の滞在をした。ホーチミン市滞在中の2008年2月17日に、発熱、頭痛、脱力、食欲不振、嘔吐を発症した。翌日にプノンペンに戻り、そこで、意識障害、痙攣、四肢脱力を発症したため入院。2月22日に重症化し、バンコクの病院に転送され、人工呼吸器管理下で治療を受けた。JEV特異的IgM抗体が血清と髄液中に検出された。CDCの検査によっても、3月25日(発病から5週間後)に採取された検体からJEV特異的IgM抗体と中和抗体陽性が確認された。

MMWR編集委員会コメント:JEVの感染による症状発症率は1%未満だが、発症した場合の致死率は30%である。また、生存者の50%は神経系の後遺症を残している。特異的な治療法がないため、感染予防が重要となる。予防の中心は蚊の対策と予防接種である。日本脳炎流行地域への渡航者に神経侵襲性ウイルスの感染が認められた場合は、日本脳炎を疑わなければならない。

(CDC, MMWR, 58, No.27, 737-740, 2009)

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