アフリカのデング熱:コートジボワールにおけるデングウイルス3型の出現、2008年
(Vol. 30 p. 161, p. 164-165: 2009年6月号)

デング熱は、人間の生態変化の結果として過去30年にグローバルに広がった新興感染症で、約25億人が居住する 100カ国を超える熱帯、亜熱帯地域の国で伝播している。アウトブレイクや血清学的調査、アフリカからの帰国者の診断例の報告より、アフリカでは1980年代にデング熱が相当増加したことが示されている。デング熱は異なる血清型のウイルスによる連続感染により、ショックや死に至るデング出血熱の危険性が増加する。アフリカでの流行の大部分は死亡を伴わないデングウイルス1型、2型による古典的なデング熱であったため、高罹患率、高死亡率の原因であるマラリアやHIV/AIDSなどの疾患と比較すると、優先順位の高い疾患とはみなされなかった。

アフリカでのデングウイルス3型の最初の大きなアウトブレイクは、1984〜1985年にモザンビークのPembaで報告された。このアウトブレイクで大部分の患者は2回目の感染をうけ、デング出血熱とショックによる死亡例が2例発生した。1993年にはソマリアでデングウイルス3型と2型の混合アウトブレイクも報告されている。アメリカ大陸、アジア、中東では、2000年代に、罹患率が高く、重症なデングウイルス3型の大きなアウトブレイクが発生した。

2008年4月、アビジャンで3例の黄熱が確認されたこと、5〜7月にアビジャンを訪問した日本人観光客とフランス人在住者が、帰国後、デングウイルス3型による急性感染症と診断されたことを受けて、2度の国際的な警報が出された。ウイルス分離株は、2004年にサウジアラビアで循環していたデングウイルス3型の遺伝子型と類似していた。フランスでは、2008年5月1日〜8月31日までにアビジャンから帰国したデング熱疑い例から得られた14検体中、7検体がデングIgM抗体陽性となり、RT-PCRにより、さらなるデングウイルス3型陽性例が確認された。また、コートジボワールからのデング熱輸入例は2008年に急激に増加した〔2006年1例、2007年3例、2008年(8月31日まで)8例〕。

アビジャンでのデング熱の流行範囲と危険性の評価のために、WHOと保健省のチームが、2008年9月に追跡調査を行った。多くの古典的なデング熱疑い症例が確認され、重症例や死亡例は見いだされなかったが、第19週に定期サーベイランスの一環として収集された2検体で、RT-PCRによりデングウイルス3型が確認された。同時に流行した黄熱との検査室鑑別診断の必要性から、ダカールとパリのパスツール研究所では、WHOと協調して、2008年9月下旬〜10月にかけて、コートジボワールのパスツール研究所に検査室診断のための技術移転を行った。

(WHO, WER, 84, No.11/12, 85-88, 2009)

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