小学校で発生したC群ロタウイルスによる集団感染性胃腸炎事例―大阪府
(Vol. 30 p. 134-135: 2009年5月号)

2009年3月に大阪府和泉市内の小学校において嘔吐・下痢を主症状とする集団胃腸炎の発生事例があり、患者便からC群ロタウイルスを検出したので、その概要について報告する。

2009年3月10日大阪府和泉保健所へ胃腸炎症状を呈し欠席した児童が10名いると通報があり、当該小学校の調査が行われた。当該小学校は各学年1〜3クラスで、1階に2年生および学童保育教室、2階に1年生、3年生および4年生の教室、3階に5年生および6年生の教室が配置されていた。

3月4日に2年生の児童が教室内で嘔吐し、教職員が清掃および塩素系消毒剤を用いて消毒を行った。当該児童は3月6日にも同教室で嘔吐し、同じく教職員が清掃消毒を実施した。3月6日より同クラスの児童4名および吐物の処理を行った教職員のうち1名が発症し、その後3月24日まで低学年から高学年へと広がるように患者発生がみられた。患者発生状況は1年生26名(39%)、2年生16名(24%)、3年生6名(9%)、4年生9名(14%)、5年生6名(9%)、6年生2名(3%)、教職員1名(1.5%)の計66名であった。日別有症者患者数については図1に示す。患者の症状は嘔吐・下痢が29名(44%)、嘔吐のみが21名(32%)、下痢のみが16名(24%)であった。

3月11日〜12日に採取された患者便5検体について大阪府泉佐野保健所にてRT-LAMP法を用いてノロウイルスの検索を行った結果、全例陰性であった。そのため大阪府立公衆衛生研究所にて、ELISAキットによりA群ロタウイルス(ロタクロン、TFB)、腸管アデノウイルス(アデノクロンE、TFB)、またRT-PCRによりサポウイルス、アストロウイルスを検査したが、すべて陰性であった。同様にRT-PCRを用いてC群ロタウイルスの検索をしたところ(葛谷ら, 感染症学雑誌 77(2): 53-59, 2003)、5検体すべてからC群ロタウイルスが検出された。さらに、PCR増幅産物をシークエンスし、相同性を確認したところ、5検体すべて同じ塩基配列であった。

今回の事例は、3月4日に教室で嘔吐をした初発患者と思われる児童の吐物中のウイルスが人→人感染を起こして広がったC群ロタウイルスによる集団感染性胃腸炎と考えられる。吐物は教職員により清掃、消毒が行われたが、十分ではなかった可能性、また、嘔吐した際にウイルスが周囲に拡散し、他の児童に感染した可能性が考えられる。当該小学校では、1年生〜3年生の児童を対象に学童保育が実施されており、使用されている教室が初発児童のクラスの教室から渡り廊下を挟んで近距離に配置されているため、学童保育を介して患者が学年を超えて発生した可能性も示唆される。

当該小学校に対しては手洗いの励行、吐物の処理法、消毒法について指導が実施された。今回の事例におけるように清掃、消毒を行った教職員が発症していることを考えると、清掃、消毒を行う際の使い捨て手袋、マスク、エプロンの着用の周知徹底など、清掃、消毒をする側の感染予防策についても考慮しなくてはならない。

C群ロタウイルスの集団感染性胃腸炎は2006年に島根、岩手、大阪(IASR 27: 121-122, 200627: 153-154, 200627: 154-155, 2006)から報告があり、その後少数ではあるが毎年各地から報告されている。今後とも、晩冬〜初夏の集団感染性胃腸炎では、C群ロタウイルスの発生動向にも注意していく必要があると思われる。

大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課
中田恵子 左近(田中)直美 山崎謙治 加瀬哲男
大阪府和泉保健所
梅室朝香 山本サヱ子 柴田敏之
大阪府泉佐野保健所生活衛生室検査課
長澤登美代 伊吹てるみ 濱石裕紀

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